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新元号になる前にーー”平成アニメ”とは何?『平成最後のアニメ論』著者に聞く

世相や作り手の思いを反映した作品も

『輪るピングドラム」 Blu-ray BOX(キングレコード)
『輪るピングドラム」 Blu-ray BOX(キングレコード)

ーーアニメは震災やいじめといった社会的なトピックに強く影響を受けると感じます。

 制作者であるアニメ監督や脚本家は、仙人でも世捨て人でもありません。日本に居住して、基本的に会社へ出社してアニメを作っていますし、私たちと同じように現代社会のさまざまな事件に一喜一憂しているわけです。昭和アニメなら、『機動戦士ガンダム』の富野由悠季監督や『装甲騎兵ボトムズ』の高橋良輔監督、『AKIRA』の大友克洋監督、『機動警察パトレイバー』シリーズの押井守監督などは、自覚的に時事的なトピックスを入れています。

ーー震災、テロ、事件などさまざまなトピックがあるなかで、特に取り扱われているものは何でしょうか?

 やはり戦争とテロでしょう。震災は、リアルな世界で被害者がいるためテーマの扱いに注意しないといけません。

 個別の事件もそうです。作品でいえば『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(2013年)や『ノーゲーム・ノーライフ』(2014年)のように、いじめやぼっちを扱う際には、フィクションを交えながら抽象化するというアプローチをとります。取り上げるテーマには、配慮が必要ということです。SNSにおける炎上にもつながりますので。

ーーそれらのトピックの扱われ方は、平成の時代を通して、どのように変化しましたか?

 焦点を絞って、戦争とテロに限定してお答えします。平成に起こった大きな戦争は、2001年の9.11米同時多発テロ、およびその後のアフガニスタン戦争とイラク戦争があります。そして、それらに対するテロの連鎖といったものが、アニメ作品に大きな影響を与えています。

 たとえば、『機動戦士ガンダム00[ダブルオー]』(2007)や『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006~2008)がそうです。両作品とも9.11以降の戦争とテロを意識して、かなりシリアスに物語を展開しています。

 また『TIGER & BUNNY』(2011)では、同時多発テロを企てるウロボロスという組織が登場しますし、『PSYCHO-PASS サイコパス』(2012)では、槙島聖護という犯罪者が社会システムに刃向かいます。これらは近年起こったマドリード、ロンドン、パリなど大都市におけるテロの連鎖を彷彿とさせます。

 さらに幾原邦彦監督の『輪るピングドラム』(2011)では、1995年にオウム真理教が起こした「地下鉄サリン事件」をモチーフとし、事件の加害者と被害者の双方の視点から描いています。

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