ファミコンの性能って、スマホと比較するとどれくらい? 初代DQ「カニ歩き」の理由も分かる
ファミコンソフト開発は容量との戦い
●『ドラゴンクエスト』も容量に悩まされながら開発
たとえば、初代『ドラゴンクエスト』(容量:64キロバイト)の場合、キャラクターは常に前を向いた状態で描画されていました。「カニ歩き」と呼ばれることもありましたが、容量節約のためには仕方のない仕様だったのです。
さらには、シナリオライターである堀井雄二氏は、ゲーム中で使うカタカナは「20文字」に絞り込んだといいます。「ダースドラゴン」も、本来は「ダークドラゴン」にしたかったものの、使えるカタカナリストに「ク」が入っていなかったため、この名前になったことが知られています。
しかしながら、モンスター・呪文・都市の名前など、制約があるなかで独特のクセがあるネーミングを生み出したのは、驚異的なセンスだと言えます。
●『FF』で「飛空艇8倍速」を実現した天才プログラマー
容量という壁を、天才的な能力で切り抜けた人物も存在します。「ファイナルファンタジー」シリーズに参加した、ナーシャ・ジベリ氏です。彼は、イランの王族出身でありながら、スクウェアに入社したという異色の経歴の持ち主。天才プログラマーとして数々の逸話を持ちます。
有名なエピソードとして、初代『ファイナルファンタジー』(容量:256キロバイト)の開発時に、彼は「飛空艇に影をつける」という仕事を行いました。当然、容量に頭を悩ませられる時代だったため、周囲の人物は無理だろうと思っていたものの……翌日、彼は飛空艇に影をつけただけでなく、おまけに「4倍速移動」まで実現させ、周囲を驚愕させたといいます。
さらに『FFII』、『FFIII』では、飛空艇の8倍速を実現。当時彼の同僚だった梶谷眞一郎氏は、インタビューで「飛空艇の高速移動が実はバグ」だということを話しています。ファミコンの本来の性能を超えたスピードを実現していたのです。
ハード性能が数百倍、数千倍となった現代でも、レトロゲームの魅力に取りつかれた人はたくさんいます。もちろん、「思い出補正」があってのことかもしれませんが……性能の限界と戦いながら、工夫を凝らしていたからこそ、いまプレイしても楽しいゲームが生み出されたのかもしれません。
※本文を一部修正しました(2月21日21時52分)
(古永家啓輔)