『ガメラ2 レギオン襲来』BS12で放映 日本屈指のSF映画は「お蔵入り企画」から生まれた?
10年の眠りから目覚めた宇宙生物

ガメラに苦渋を飲ませる宇宙生物レギオンは、『G1』から引き続きシナリオを担当した脚本家・伊藤和典氏が生み出したオリジナル怪獣です。地球とは異なる「生態系」が襲ってくるというユニークなアイデアは、10年間にわたって温められてきたものです。
1986年ごろ、金子監督は『ウルトラQ・ザ・ムービー』という企画を考えていました。日本の特撮ドラマの先駆作『ウルトラQ』(TBS系)のリメイク企画で、オムニバスものを想定していたそうです。オープニングで「マンモスフラワー」が登場し、クライマックスとなる第3話は隕石怪獣「ガラモン」が地球を襲うという構成でした。
この「ガラモン」のエピソードを担当していたのが伊藤氏でした。金子監督は、1981年~86年にテレビ放映された人気アニメ『うる星やつら』(フジテレビ系)に脚本提供していた頃から、『うる星やつら』のスタッフだった伊藤氏と交流があったそうです。
伊藤氏が考えた「ガラモン」は、地球をテラフォーミングするためのロボットだったという設定でした。残念ながら金子監督が企画した『ウルトラQ・ザ・ムービー』は日の目を見ず、代わりにまったく異なる内容の、実相寺昭雄監督作『ウルトラ Q ザ・ムービー 星の伝説』(1990年)が制作されることになります。
10年の歳月を経て、レギオンプラントは発芽し、大成長を遂げたわけです。恐るべき生命力です。やはり、『G1』の成功が大きかったのでしょう。
興奮度マックスの「足利防衛ライン」
強敵レギオンに、ガメラは大苦戦。レギオンは札幌、仙台を壊滅状態にし、さらに南下します。自衛隊は首都・東京を守るため、最終防衛線として「足利防衛ライン」を張り、最終決戦に臨みます。
レギオンに手も足も出なかったガメラですが、ガメラの復活を祈る子供たちや浅黄の純粋な想いが、ガメラに不思議な力を与えることになります。目を覚ましたガメラが自衛隊や民間人のアシストを受けて、レギオンに立ち向かうシーンは、胸が熱くなるものを感じます。
SF映画としてのリアリティを追求する金子監督のこだわりと、「ガメラは子供たちの味方」という昭和ガメラのエッセンスが、うまくブレンドされた展開となっています。
映画のクライマックス、人類だけでなく、地球の生態系そのものを変えようとするレギオンに対し、ガメラは究極の必殺技を繰り出すことになります。このシーンは、3月5日(日)のBS12で放映される『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999年)にもつながることになります。
日本の特撮映画史に残る大激闘の最後を締める、水野美紀さんのセリフも印象的です。
「ガメラだけは敵に回したくないよね」
評価の高い「平成ガメラ」三部作のなかでも、『G2』はストーリー性と特撮パートの完成度がとても高いものとなっています。地球の守護神・ガメラの健気さに、誰しも心を打たれるのではないでしょうか。
(長野辰次)