『進撃の巨人』光るムカデの正体は? どうして始祖ユミルにとりついたの?
2000年前に始祖ユミルに取りついてから、今はエレンのなかにいる「光るムカデ」。エルディア人に巨人になる力を与えた謎の存在ですが、実はただひとつの確固たる意志があります。その意思があらゆる問題の根本的な原因になりました。
世界を滅ぼす災厄と化したエレンに挑む
『進撃の巨人The Final Season完結編』が遂に始まりました。3月3日に前編が放送され、残すは後編のみです。34巻にわたる原作が完結してから既に2年が経過しましたが、まったく古びておらず作品の熱量は衰えていません。
この記事では巨人と人類の物語の始まりに戻り、始祖の巨人を生み出した「光るムカデ」のような存在の正体について考察します。
※この記事では『進撃の巨人』の未アニメ化の内容を含みます。ご了承の上お読みください。
●始祖ユミルに取りついた「謎の存在」
『進撃の巨人』世界において絶え間ない憎しみの連鎖の発端となったのは、122話「二千年前の君から」のエピソードです。身に覚えのない罪を着せられた奴隷の少女ユミルは半死半生の体で巨大な樹の洞に落ちてしまいます。そこで光るムカデのような謎の存在に取りつかれたことで、巨人に変身できるようになったのです。これが全ての始まりでした。
圧倒的な巨人の力で民族のために尽くしたユミル。フリッツ王は彼女の死により巨人の力が失われることを恐れ、ユミルの3人の娘たちに母親の遺体を食べさせて力の継承を図りました。こうして長い年月を経てユミルの血が拡散することで、巨人に変身する力を持った特殊な民族が生れました。ユミルの民、エルディア人です。
これら一連の経緯は原作マンガでもアニメでも、回想による状況描写以上の解説はありません。しかしユミルの回想シーンの直後、ガビに狙撃されて吹き飛んだエレンの脊髄から光るムカデが姿を現しました。始祖の巨人を継承したエレンの体内には、ユミルに取りついたものと同じ存在が宿っているのです。
●何が何でも生きて増えたい!
光るムカデについては、作中で有機生命の起源であり、増えたいという最も基本的な生命の本質であると語られています。また『進撃の巨人キャラクター名鑑FINAL』(講談社)においても同様の内容が記載されており、ユミルに取りついたのは「死への恐怖と苦しみ」という生命の本質に反する感情に反応したからと記載されています。つまり濡れ衣を着せられ、死にかかっていたユミルの「怖い、死にたくない」という気持ちに反応して「光るムカデ」は強くて不死身の巨人になる力を与えたのです。
ここで面白いのが「光るムカデ」が取りついたのが脳ではなく脊髄という点です。生存欲求が理性よりも根源的で反射的な感情だと言う点を見事に反映しています。盲目的なまでの生への執着があらゆる争いを生み、群れのなかで生存に有利な立場を永続化しようという試み(差別)につながり、無数の苦しみの原因になったのです。
生への執着こそエルディア人を巡る差別の問題の根源にあるものです。かつてエルディア人に虐げられてきた人々は、巨人に変身できるエルディア人を生かしておいたら、再び自分たちの生存を脅かすと確信しています。そしてその思いがエレンに共存の不可能性を悟らせてしまいました。