『サザエさん』のED主題歌に「2番」が選ばれたのはナゼ? 矛盾があった歌詞
国民的長寿アニメ『サザエさん』のエンディングテーマといえば「サザエさん一家」。長らく愛されている曲ですが、実はエンディングで使用されているのは2番の歌詞でした。そこには、ある「秘密」があったからです。
国民的アニメ『サザエさん』エンディングテーマに隠された「秘密」

国民的長寿アニメ『サザエさん』のエンディングテーマといえば「サザエさん一家」。印象的なイントロをすぐに思い出す人も多いでしょう。
「サザエさん一家」は「大きな空を眺めたら 白い雲がとんでいた」という歌詞で始まります。実はこれ、1番の歌詞ではありません。2番の歌詞なのです。
では、なぜ2番の歌詞を使用しているのでしょうか。「サザエさん一家」の1番の歌詞は、このように始まるからです。
「二階の窓を開けたらね 朝の光が差しこんだ」
ご存知のとおり、サザエさんたちが住む磯野家には「二階」がありません。磯野家は木造平屋建て。だから1番の歌詞がそぐわないと判断されて2番が使われているのです。ちなみに「ホラホラ みんなの声がする」以降は3番の歌詞が使われています。
と、ここまではわりと有名な話。『トリビアの泉 ~素晴らしきムダ知識~』(フジテレビ系)で取り上げられたため、ご存知の方も多いでしょう。
では、なぜ「サザエさん一家」に「二階」と書かれたのでしょうか。作詞を手がけた林春生が何となく書いてしまったのでしょうか。いえ、そうではありません。
理由は簡単です。『サザエさん』に登場する磯野家には「二階」があったからです。
『サザエさん』といってもアニメではなく、原作マンガのこと。朝日文庫版『サザエさん』1巻の26ページを見ると、磯野家の廊下で会話しているサザエとワカメの背後に二階へ続く階段が描かれています。同じく45ページにも、サザエがほうきを持ってカツオを追いかけ回している背後に階段が描かれていました。
『サザエさん』の連載が始まったのは1946年4月22日、福岡の地方新聞「夕刊フクニチ」でのことでした。この頃、作者の長谷川町子は福岡市に住んでいたのです。そして、磯野家も福岡市に住んでいました。
福岡での磯野家の暮らしぶりはとても良いもので、家は二階建て、洋間には蓄音機が置いてありました。これは父親が事業をしていて裕福だった長谷川家の暮らしぶりを反映しています。長谷川の友人によると、昭和初期の長谷川家にはお手伝いさんがふたりもいたそうです(西日本シティ銀行「No.58サザエさん物語り」より)。
1946年の年末、長谷川は家族とともに上京。それとともに『サザエさん』の磯野家も東京に引っ越しました。引っ越しの様子は、朝日文庫版1巻の126ページから数エピソードにわたって描かれています。このとき、磯野家が引っ越してきたのが現在の木造平屋建の家です。