『まんが日本昔ばなし』伝説のトラウマ話 「救いなさすぎ」「最終回が最恐」
人の欲望は果てしない
●「飯降山(いぶりやま)」1994年8月27日放送

むかしむかし、ある山で3人の尼さんが修行を行なっておりました。殺生を禁じられている尼さんたちは毎日毎日草や木の実を食べて過ごし、励まし合い、助け合いながら過ごしていたのです。
そんなある日のこと、突然空から3つのおにぎりが降ってきます。尼さんたちは天からのお恵みだろうとありがたくおにぎりをいただきましたが、この日から何かが狂っていきました。
おにぎりは、空から毎日降ってきました。1日にひとつのおにぎりでは物足りなくなってしまった一番年上の尼さんは、もうひとりの尼さんと結託し、一番若い尼さんを殺してしまいます。しかしその日から、おにぎりは2個しか降ってこなくなったのです。
ただ、もうちょっとだけおにぎりを食べたいがために、若い尼さんを殺したことを、もうひとりの尼さんは悔いるようになりました。そして、一番年上の尼さんは、この尼さんも殺しておにぎりを独り占めすることにしましたが、その日から、おにぎりが降ってくることはありませんでした。やがて冬が来て、雪が降り、そして春になりました。
一番年上の尼さんは、骨と皮ばかりになりながら、よろよろと山を降りていきました。草も木の実も、冬の山にはありません。おにぎりも、もうありません。この尼さんは、何を食べて生きながらえていたのでしょうか? それは、語ってはならないことなのでしょう。
以来、この山は「飯降山」と呼ばれるようになりました。今でいう、福井県での出来事です。
このお話は『まんが日本昔ばなし』のレギュラー放送の最終回のエピソードで、子供たちは最後にとてつもないトラウマを植え付けられることとなりました。「人の内面の狂気をまざまざと見せられた」「道徳を説く尼さんが欲望に負けるのがトラウマ」「お経を唱えながら、これから殺す相手の方へ振り向く場面が怖い」と、今も屈指の恐怖回として語り継がれています。
(早川清一朗)