『バースデー・ワンダーランド』原恵一監督インタビュー 目指すのは”日本にない新鮮さ”
流行におもねることなく、観る者の琴線に触れる名作アニメを生み出してきた原恵一監督の新作劇場アニメ『バースデー・ワンダーランド』が公開されます。初挑戦となるファンタジー映画について、またキャラクターデザインを務めたイリヤ・クブシノブの起用について、原監督が語りました。
ファンタジーというものに、あまり興味を持てずにいたんです

原恵一監督といえば、1970年代のライフスタイルを甘美に再現した『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)、戦国時代をアニメーション手法でリアルに表現した『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(2002年)が大絶賛され、その後も『河童のクゥと夏休み』(2007年)をはじめとする感動作を放ってきました。
いずれも、日常生活を丁寧に描くことで、その日常生活の中で起きる非日常的な体験がより鮮やかに観客の心に届いていました。
ところが、2019年4月26日に公開される最新作『バースデー・ワンダーランド』は、自分に自信がない少女の主人公が、現実世界とは異なるワンダーランドを旅するという高純度のファンタジー映画となっています。キャラクターデザイナーの起用を含め、原監督にとって挑戦的な作品になったといえます。映画の公開を控え、原監督にお話を聞きました。
ーー日常生活を描くのが得意な原監督にとっては、初となるファンタジー映画。映画づくりそのものが、一種の冒険だったのではないでしょうか?
原恵一監督(以下敬称略) 僕はどうもファンタジーというものに、あまり興味を持てずにいたんです。それもあって、不安は多少ありました。でも、作り始めたら、これまでやってきたこととそう大きな違いはないように感じられたんです。要は物語の舞台設定が異世界なだけであって、その異世界を冒険するキャラクターたちは、いつもの僕が描くものと違いはなかったんです。
物語を作る上で重要なのは、世界そのものよりも、その世界でキャラクターたちが何をするかですから。そういう点では、戸惑いはなかったですね。
ーー原監督が絵コンテ・演出で参加した『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』(1993年)も、野原一家がパラレルワールドで冒険を繰り広げる物語でしたね。原監督がいつか劇場版『ドラえもん』を撮ることになったら、こんな感じの作品になるのかな、なんてことも感じました。
ハハハ、どうでしょうか。今のところ、「劇場版『ドラえもん』の監督を」という話は僕のところには来ていません(笑)。声が掛かったら? う~ん、どうだろう。そのとき考えてみます。