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映画『キングダム』 中国が舞台の「戦国もの」が人気爆発の理由とは

スクリーンを埋め尽くす"圧倒的リアリティ"

『キングダム』第1巻(集英社)
『キングダム』第1巻(集英社)

 奴隷という低い身分から天下の大将軍を目指し立身出世していく設定や、熱血で猪突猛進型の主人公が成長していく様は、今現代の日本の漫画では、珍しいものではありません。ではなぜキングダムはこれほどまでに多くの人びとを魅了してやまないのでしょうか?

 まず一つは先述した通り、圧倒的スケールがあります。日本で10万の兵同士がぶつかり合うような大規模な戦争は、世界大戦を抜くと、天下分け目の決戦と呼ばれた関ヶ原の合戦くらいなものでしょう。しかし、「キングダム」が舞台とする中国の歴史では、1国の内乱で「8万の兵」という言葉が平気で出てきてしまうのです。

 しかも、「それでもまだ少ない。相手は20万。後ろに控えるのは60万」。それも7カ国あるうちのひとつの国。やはりスケールが違います。

 そして、この圧倒的なスケールは現代の映像化に向いています。16:9のワイドスクリーンで万と万の大軍勢同士がぶつかり合う様は、見ていて爽快の一言です。「テレビがワイドになっていくと、トリオ芸人のテレビ露出が増えた」というのは有名な話で、横に広くなった分、その隙間を埋めたくなるのが、人間の性なのです。

 そういう意味では、これほどまで映画に向いている作品が他にあるだろうかと思えます。広大な中国の大地と建造物、圧倒的な大人数でのド派手なアクションが繰り広げられるのですから。

 もうひとつの要素はリアリティでしょう。リアリティはリアルとは違います。リアルは現実という意味で、リアリティとは現実味や現実のようであることを指し、リアルとリアリティは似て非なるものといえます。春秋戦国時代は中国で実在した時代です。主人公の信も李信(りしん)という実在の人物ですし、秦が中国を統一し、秦王が始皇帝になることも歴史的な事実です。

「数千数万という大軍を相手に数十人で策を駆使して破る」といったことや、「天下の大将軍が一振りで何十人も吹っ飛ばす」と言った描写は、日本の戦国時代の武将たちがやっていたら無理のあることだろうと思いますが、中国史のなかの出来事だと思ってみれば、なぜか割り切れるものなのです。

 なぜか違和感なく納得できてしまうーー中国史を舞台にすることで、すんなり入ってくるのです。春秋戦国時代という、日本人にはあまり馴染みのない時代を舞台にすることも一役買っていることでしょう。

 三国志を題材にした映像作品やゲームは数多くあります。漫画『キングダム』は春秋戦国時代を日本で一躍有名にした作品で、アニメやゲームにも展開されています。
 
 後に春秋戦国時代が三国志のように日本で愛され続ける題材になるとすれば、その礎(いしずえ)が今回の映画『キングダム』かもしれません。大陸の歴史を舞台とした圧倒的スケールを、映画館で楽しんでもらいたいです。

(二木知宏)

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