ガンダム作品のニュータイプだけど「まともな人格者」3選 「落ち着いた人のほうが珍しい?」
ガンダム作品のカギを握っているニュータイプという概念。しかし、ニュータイプと呼ばれる人物は情緒不安定だったり、少々エキセントリックな言動が目立つケースも多いようです。そこで今回は、ニュータイプのなかでも落ち着いた人格者にスポットを当ててご紹介します。
信頼のおける安定したニュータイプたち
ガンダム作品に登場する「ニュータイプ」という概念。作中では異常なまでに勘が働き、ファンネルのようなサイコミュ兵器を扱えるエスパー的な能力として描かれています。このニュータイプの定義には曖昧な部分も多く、観る人や作り手によっても細かい解釈が異なるようです。
小説版『機動戦士ガンダム』の中で、ジオン・ズム・ダイクンは、ニュータイプを宇宙に適応進化した新人類と述べ、広大な空間で生きるための高い認識能力と優しさを持った人物と定義していました。
しかし、作中に登場するニュータイプたちは、どちらかと言うと変わり者が多く、エキセントリックな言動や情緒の不安定さが目立ちます。主人公のアムロやジュドー、シャアやララァなどは比較的まともな部類に入りますが、それでも時々常人には計り知れない思考や発言がありました。
そこで今回はニュータイプとしての素養を有しながら、常人以上に安定感のある有能な人格者たちをご紹介します。
●ミライ・ヤシマ
実はミライさんは、アムロよりも早く、ニュータイプとしての素養に目覚めていた節のある女性です。
TVアニメ『機動戦士ガンダム』の24話「追撃! トリプル・ドム」の中では、出撃しようとするマチルダに「間に合わないかもしれない」と告げ、ハッとした表情でマチルダの顔を見つめるなど、まるでマチルダの死を予知しているかのような描写がありました。ちなみに後に夫となるブライトも、ミライについて「ニュータイプに近い」と語っています。
そんなミライは温和な性格で、子供が多いホワイトベースではお母さん的な存在として慕われていました。一年戦争後、ブライトと結婚してからは実際に二児の母となり、離れていることの多い夫に変わって家族を支えます。『機動戦士Zガンダム』では、まだ若く暴走しがちなカミーユやベルトーチカを諫(いさ)めるシーンもあり、印象的でした。
●シャリア・ブル
ジオン公国軍のニュータイプと言えばシャアやララァのイメージが強いですが、木星帰りの男シャリア・ブルの存在も忘れられません。
フラナガン機関の調査でニュータイプの素養を認められたシャリアは、上司のギレン・ザビからキシリアの部隊に行くことを命じられます。ギレンにとってキシリアはいわば政敵。ギレンが「私がなぜキシリアのもとにやるかわかるか?」と問いかけた際、シャリアは「私には閣下の深いお考えはわかりません」と返答します。
ギレンの政治的な意図に気づきながら、それをあえて言及しなかったシャリア・ブルの聡明さと思慮深さが際立ったシーンです。
また、シャアやララァと出会った時の会話でも、シャリアは温和な態度を見せます。ララァの高い素養を一目で見抜くと、その価値をシャアに伝えます。そして「もし我々がニュータイプなら、ニュータイプ全体の平和のために案ずるのです」と伝えたシャリアに、シャアは「私はまた友人が増えたようだ」と応じています。
シャリア・ブルが戦死せず、本当の意味でシャアの友人となり、良き相談相手として傍らにいることができたなら、その後の歴史は大きく変わっていたかもしれません。
●レビル将軍
「ジオンに兵なし」の演説でも知られる、地球連邦軍の司令官・レビル将軍も「実はニュータイプの素養があったのでは?」と思われている人物です。
劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』の中でコンペイトウ(旧ソロモン)を訪れたレビル将軍は、ふいに原因不明の頭痛に見舞われます。レビル自身にも不思議な感覚だったらしく、「なんだ?」と驚きの表情を見せていました。
この時、ソロモンの周辺宙域ではララァが乗るエルメスが、サイコミュ兵器による超遠距離攻撃を行っており、レビルはこの気配を察知したと受け取れる描写でした。ちなみにアムロやセイラ、ミライらのニュータイプも、レビルと同様に不思議な感覚を探知しています。
レビル将軍は、ホワイトベース隊の功績を早い段階から認めていた名将。ジオンのニュータイプ論は「厭戦気分をカバーするための宣伝」と切り捨て、「ニュータイプはな、戦争なぞせんで済む人類のことだ。超能力者たちのことではない」と語っています。そのレビル将軍自らがニュータイプだったとすると、何とも皮肉なセリフです。
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他にも、純粋なニュータイプではない、強化人間のほうが精神的に不安定なケースが目立ちます。それでも研究が進化しているのか、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場したギュネイ・ガスなどは、強化人間ながら比較的落ち着いた様子でした。ニュータイプのクェスが飛び抜けて感情の起伏が激しい少女だっただけに、とても対照的に見えましたね。
皆さんはニュータイプの人格者と聞いて、誰を思い浮かべるでしょうか。
(大那イブキ)