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大物監督たちが描いた「夢」がここにあるーー傑作平成アニメ映画10選(後編)

平成30年で作られたアニメは数知れず。改元直前だからこそ見返したい、平成アニメ映画をセレクトして紹介する本企画、今回は後編の5作品です。

時代の閉塞感を突き破った才能

『マインド・ゲーム』(TCエンタテインメント)
『マインド・ゲーム』(TCエンタテインメント)

 平成の30年間に生み出された多彩なアニメ映画のなかから、10連休中に観ておきたい「平成アニメ」10作品。今回は後編の5作品を解説します。

●ゼロ年代を覆う閉塞感からの脱出!『マインド・ゲーム』(2004年)

 永井豪の伝説的カルト漫画を完全映像化したNetflix配信アニメ『DEVILMAN crybaby』(18年)やアヌシー国際アニメーション映画祭最高賞受賞作『夜明け告げるルーのうた』(17年)で異才ぶりを大いに発揮した湯浅政明監督の監督デビュー作。閉塞感漂うゼロ年代に、その名を刻みました。

 ロビン西の同名コミックを原作にしているものの、湯浅監督の表現手法は実写シーンも交え変幻自在。あの世とこの世でさえ、自由に行き来してしまいます。

 極めつけは、クジラに呑み込まれてからの怒濤の展開。クジラのお腹の中でのほほんと暮らすことができたものの、一度は死を体験した主人公・西は本気で生きることを求めて死にものぐるいで大脱出を図ります。退屈な日常に呑み込まれることを善しとせず、表現者として全力疾走していくことを宣誓した、力強い監督デビュー作となりました。

 尖った作風でコアなファンを獲得した湯浅監督は、森見登美彦原作の『夜は短し歩けよ乙女』(17年)に続く、恋愛ファンタジー『きみと、波にのれたら』の公開(2019年6月)が間近に控えています。どれだけ新しいファン層を開拓するのでしょうか。時代の閉塞感を突き破った湯浅監督は、新しいステージへ向かっています。

●早逝した天才が遺した夢の世界『パプリカ』(2006年)

 働き盛りの46歳という若さで亡くなった天才アニメーター、今敏監督の生前最後に公開された作品です。筒井康隆原作のSF小説をベースに、奔放なイマジネーションを炸裂させた快作です。

 今監督は、大友克洋監督・監修のオムニバス映画『MEMORIES』(1995年)の一編『彼女の想いで』に脚本・設定で参加した後、サイコミステリー『パーフェクトブルー』(97年)で監督デビュー。入れ子構造で描かれた『千年女優』(02年)は海外でも高く評価され、リアルとフィクションとの境界線上に広がる世界を描くことが得意な監督として知られています。

 メタフィクション小説のパイオニアといえる筒井康隆とのコラボ作となった『パプリカ』は、今監督の長年の願いが具現化した渾身作。夢探偵パプリカが冒険へ繰り出す夢の世界は極彩色と官能美にあふれ、観る者をトロトロに陶酔させてしまいます。フェイクニュースや偽装データが飛び交い、現実と噓との境界があいまいになっている現在、よりリアリティを感じさせる内容となっています。

 今監督は、劇場アニメとしては『パーフェクトブルー』『千年女優』『パプリカ』、そして『東京ゴッドファーザーズ』(03年)の4作品しか残すことができませんでした。しかし、『パプリカ』の劇中で、これらの作品はもう1本の新作とともに永遠に上映され続けます。『パプリカ』という作品がある限り、今監督が描いた夢の世界は永遠に輝きを放ち続けるはずです。

【画像】『この世界の片隅に』につながる幻の作品も。平成アニメ映画の名作たち(4枚)

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