【社長のマンガ】健康企業「タニタ」 谷田千里社長の愛読マンガ3作
縛られない考え方、自由な発想のために愛読

ーー印象に残っているセリフ、シーンはありますか?
『逃げるは恥だが役に立つ』の物語の後半で、主人公・みくりの叔母・百合が、ある女性の若さへの執着に対して、「価値がないと思っているのは、この先自分が向かっていく未来」と諭し、「自分に呪いをかけないで。そんな呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」と忠告するシーン。
これは誰もが直面する「老い」に対する向き合い方を示しており、ハッとさせられました。結婚の適齢期や、恋愛の性差など、「普通」とされていることが、ときに人を縛りつける「呪い」となります。そんな枠にはまった考え方からは、「逃げればいい」と考えれば、生きやすくなりますよね。
その前段の百合のセリフ「人生は勝ち負けじゃなくて、味わうもの」とも重なる、グッとくる場面です。
『ボクを包む月の光』ネタバレになるので多くは言えませんが、最終巻で紫苑が過去に向き合い、ある登場人物に「…オレ…を」「…あ……愛して……くれて…っ」「ありがとう…」と感謝を伝えるシーン。かつてこれを言えなかったばかりに、絶望し、歪んでしまった紫苑のトラウマが氷解していく最高の場面です。
もし、前作でこの思いを伝えられていれば、おそらくこの物語は存在しなかったのではないでしょうか。前作からのファンにとって、感無量の名シーンです。また、転生する登場人物の中で、紫苑と輪、木蓮と亜梨子はそれぞれの人格が併存していましたが、このことに合理的な説明がされていたことも、私にとっては斬新でした。
『ポーション頼みで生き延びます!』の、カオルが異世界に転生するにあたって、獲得するチート能力を考え、女神セレスティーヌと交渉するシーン。カオルは転生先の環境について情報を聞き出しながら、言葉巧みに交渉を進め、アイテムボックスや言語能力など、「望んだ薬品(これがタイトルにもなっている「ポーション」)をつくる能力」以外の付帯事項を承諾させていきます。
カオルの先を読む能力と知略が垣間見える場面で、気に入っています。何事も最初の準備が肝心ですよね。カオルはあらゆる事態を想定して能力を選びましたが、後に読み違いがあったことも分かり、その落差も面白いです。
ーー漫画から得たことや学んだこと、実際に仕事に生かしていることはありますか?
そのストーリーや劇中に盛り込まれているアイデアから、考え方のヒントを得ることがあります。例えば、『ポーション頼みで生き延びます!』からは、先読みして最初に準備することが重要であること、『ぼくを包む月の光』からは、物事は綿密に計画して進めなければならないことを感じさせてくれます。
私は、縛られないものの考え方、発想の自由のために漫画を読んでいます。漫画は紙とペンとスクリーントーンでつくられていますが、何の制約もなく、どんな世界でもつくりだせるのは、今のところ漫画とアニメだけだと思っています。だから私はこれらに惹かれますし、これからも楽しみたいと思っています。
(構成:マグミクス編集部)
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●谷田千里(たにだ せんり)
1972年大阪府生まれ。2001年株式会社タニタ入社。2008年に株式会社タニタ代表取締役社長に就任。