誕生30年の『電光超人グリッドマン』 当時は「早すぎた名作」 時代が追いつき高評価に?
続編の構想が四半世紀後のヒットへ
本作が「早すぎた名作」という人も多い理由に、前述した「電脳空間で戦う」という設定がありました。放送された1993年は一般家庭のパソコン普及率は10%を超える程度だったと言われています。それだけにコンピュータにはまだ未知の機械というイメージがありました。
インターネットやコンピュータウイルスという概念はある程度は知られていたので子供でも理解できましたが、製作側の考えたドラマは現在から見ると、どうしてコンピュータでこんなことが起こるのか? と、頭をひねる奇抜な展開があります。
後半、それが特に顕著で突拍子もない話が多いのですが、これは局側から「真面目過ぎる」という意見を反映したためでした。しかし、この路線変更が『グリッドマン』の面白さを引き出し、人気をあげていった要素かもしれません。
前述しましたが、人気があったことから当初は4クールへの延長、その後にはTVシリーズの続編といった構想もありました。ここで企画案として考えられたのが、『電撃超人グリッドマンF(ファイター)』という本作の2年後を舞台にした物語です。
しかし結果的にこれらの案は映像化されることなく、児童雑誌『てれびくん』に1994年5月号から11月号までグラビア写真によるオリジナルフィルムストーリー『電光超人グリッドマン 魔王の逆襲』という形で発表されることになりました。ここで登場したのが、「グリッドマンシグマ」という新ヒーローです。
実はこの第2のヒーロー登場には大きな意味がありました。それは本来なら並び立つことのないサンダーグリッドマンとキンググリッドマンの共演です。鎧がふたつで中身がひとつという部分を解消するため、もうひとりのヒーローが必要でした。
これはTV放送中にも考えられていたアイデアで、敵側である藤堂武史がグリッドマンをコピーした「カーンナイト」として登場、その後に改心して第2のヒーロー「グリッドナイト」となるという展開です。これは『SSSS』を視聴したことのある人ならわかるでしょうが、後にアニメでこの設定が生かされることになりました。
この他にも『F』で企画されたアイデアのなかには『SSSS』で流用された設定や名称も多く、実質的な特撮版『グリッドマン』の続編であると言えるでしょう。そう思えば、『SSSS』最終回で『グリッドマン』の主題歌である「夢のヒーロー」が流れ、特撮版の姿に戻ったグリッドマンも納得できることと思います。
電脳世界を舞台にした作品が増えていったのは20世紀も終わりの頃、おそらく『デジモンアドベンチャー』以降ではないでしょうか。そう考えれば本作が「早すぎた名作」というのも納得ができるというもの。ようやく時代が追いついたことで『グリッドマン』は評価され、アニメ作品としてヒットするのも納得できるということかもしれません。
(加々美利治)
※本文の一部を修正しました。(2023.3.24 09:48)