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任天堂の愛すべき「失敗」ハードたち 売上好調、でも賛否巻起こったワケ

世界的にヒットした名機にも、失敗が潜んでいた

Nintendo Switchに抜かれるまでは、この「Wii」が任天堂の据え置き機で最も売れていたゲーム機だった
Nintendo Switchに抜かれるまでは、この「Wii」が任天堂の据え置き機で最も売れていたゲーム機だった

●大きく成功するものの、コアユーザーからの賛同は得られにくかった「Wii」

 2006年に任天堂がリリースした「Wii」は、これまで苦戦が続いた状況を覆し、一躍世界的な大ヒットを遂げます。1億台以上も販売されたWiiは、幅広いユーザー層に支えられた名機であり、間違いなく成功を収めたゲーム機です。しかしその成功の裏に、細かな失敗もいくつか潜んでいました。

 Wiiの大きな特徴といえば、同梱されたコントローラーの形状もそのひとつ。TVなどのリモコンに近いデザインと操作性を採用し、普段ゲームに触れていない人でも操作しやすい直感的な取り扱いを可能としました。

 また、当時のゲーム機は大型化の一途を辿(たど)っていましたが、Wiiのサイズはかなりコンパクト。ライバル機と比べると価格も抑えめだったので手に取りやすく、カジュアル層のみならずゲームに触れてこなかった両親や祖父母なども取り込み、子供や孫と一緒に遊ぶプレイスタイルの提案に成功しました。

 新たなユーザー層の掘り起こしが功を奏し、大ヒットに繋がったWii。ですが、このスタイルがすべての層に心地よく響いたわけではありません。特に、のめり込んでプレイするゲーマー層やコア層の一部は、Wiiの方向性に賛同できませんでした。

 Wiiリモコンは、TVのリモコンのような操作を可能とした反面、TVに向けるポインター操作にせよ、傾きや動きを検知するモーションセンサーにせよ、その精度に甘さがあり、ゲーマー層からは不満が募ります。従来のような両手持ちも可能でしたが、リモコンの形状を重視した影響で持ちやすいとは言えません。

 また映像出力はHDMIに対応しておらず、AVマルチ出力端子のみ。本体性能の影響もあり、描画されるゲーム画面はライバル機より見劣りするケースも見受けられました。

 価格を抑え、誰でも操作しやすいWiiリモコンを用意し、その間口の広さでヒットを遂げたWii。ですが同時に、性能は控えめになり映像出力はHDMI非対応、本格的な操作を楽しむにはWiiリモコンだと役者不足と、ゲーマーからすれば「失敗」とも判断できる要素を抱えていたのも事実。Wiiは、成功の要因が失敗にも繋がっている、表裏一体のゲーム機だったとも言えるのです。

●特徴的ながら、時代に追いつかれてしまった「Wii U」

 華やかな成功を収めつつも、コアなユーザーからは厳しい視線も集まったWii。その後継機だったWii Uは、新たなゲーム機に移行するといった習慣がないカジュアル層とうまく繋がれず、またWiiで離れていったコア層の呼び戻しにも苦労します。

 Wii Uの機能面で大きな特徴は、タブレット機能を搭載したコントローラー「Wii U GamePad」です。Wiiでは、リモコンフォーマットの操作性でカジュアル層の取り込みに成功しましたが、今後はタッチパネルを採用し、さらに直感的な操作を実現させました。

 画面を直接タッチして操作する分かりやすさは、現在広く普及しているスマートデバイスの人気ぶりを見れば疑う余地もありません。当時のWii Uが打ち出した方向性は、消費者が求める機能性と合致していたのです。

 しかし2012年12月に発売されたWii Uの躍進を阻んだ一因も、そのスマートデバイスにありました。2013年の6月に総務省が公開した「平成24年通信利用動向調査の結果」によると、2011年末時点のスマホの世帯保有状況は29.3%。持っていても不思議ではないものの、固定電話(83.8%)やガラケー(94.5%)の保有率に全く届きません。

 それが、2012年末におけるスマホの世帯保有状況となると、一気に49.5%と急激な伸びを見せました。また、翌年の調査における2013年末のデータだと62.6%まで増えており、スマホの急速な普及が窺えます。

「画面をタッチするゲーム機」という提案はWii Uの大きな強みとなるはずでしたが、それが実を結ぶよりも先にスマホが勢力を広げ、なかなか勢いに乗れません。むしろスマホと直接比較し、Wii U GamePadの大きさと重さをネックと感じた人もいました。

 据え置き機ながら2画面構成も可能という独自性もあったものの、肝心なゲーム側がこの構成を十分に活かしたとは言えず、さまざまな狙いが裏目に出た感のあるWii Uは苦戦続きのまま2017年1月に生産を終了。世界累計販売台数も1356万台で打ち止めと、残念な結末を迎えました。

 ですが、「手元に操作可能なタッチパネルを用意する」「TVを占領せずにゲームが遊べる」といったWii Uの設計思想は、後続機のNintendo Switchに受け継がれ、そうした特徴も魅力となって見事に開花。発売直後から好スタートを切り、たびたび品切れするほどの人気ゲーム機となりました。

 さらに、『マリオカート8』や『ピクミン3』、『ドンキーコング トロピカルフリーズ』に『スーパーマリオ 3Dワールド』など、Wii U向けにリリースされたタイトルたちがNintendo Switchにも登場し、最新ゲーム機の盛り上がりを大きく後押し。Wii U時代の設計思想とゲームソフトの資産が、Nintendo Switchの大きな成功の一因となったのです。

* * *

 時に失敗も味わった任天堂は、しかしその経験を元に新たな道を模索し、その果てに成功を手にしてきました。ですが、そこをゴールとはせず、再び失敗と成功が交錯する未知の世界に飛び込みます。その飽くなき挑戦心こそが、任天堂がつかみ取った「成功」そのものなのかもしれません。

(臥待)

【画像】え、こんなに売れてた!? 任天堂の歴代据え置き機と販売台数(7枚)

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