『まんが日本昔ばなし』恐ろしくて悲しいトラウマ回 「一体誰が悪いのか?」
1975年から1994年にかけて放送された『まんが日本昔ばなし』は、日本各地の昔話をアニメ化した作品です。多くの子供たちを楽しませてくれた『まんが日本昔ばなし』ですが、とても怖いお話が放送され、トラウマになるほどの強い印象を残すこともしばしばありました。今回はそのなかでも特に怖く、そして悲しいお話をふたつ、紹介します。
「怖くて悲しい」昔ばなし

1975年から1994年にかけて放送された人気番組『まんが日本昔ばなし』は、日本各地の昔話をアニメ化した作品です。毎週子供たちが楽しみにしていた『まんが日本昔ばなし』ですが、定期的に「トラウマ級」の怖いお話が放送され、お茶の間が凍り付くこともありました。今回は、そのなかでも特に怖く、そして悲しいエピソードを紹介させていただきます。
●「キジも鳴かずば」1976年5月15日放送
昔あった、恐ろしくて悲しい話です。今でいう長野県の犀川(さいがわ)という川のほとりに、小さな村がありました。そこには妻に先立たれた弥平という男と、娘の千代が暮らしておりました。弥平の妻は、数年前に洪水で命を落とし、それからふたりは身を寄せ合って生きていたのです。
そんなある日、千代が重い病で寝込んでしまいます。千代は、かつて母親が生きていた時に一度だけ食べたことがある、「小豆まんま」を食べたいとせがみます。しかし、弥平の家は貧しく、小豆も米もなかったのです。
思い悩んだ弥平は地主の家から米と小豆を盗み出し、千代に食べさせました。そして、千代は無事に元気になりましたが、小豆まんまを食べられたうれしさのあまり、千代は外に出て手毬をつきながら「小豆まんま食べた」と歌ってしまったのです。その歌声は、村人に聞かれていました。
その後、村は大雨に見舞われました。川の反乱を鎮めるために咎人を人柱とすることになり、米と小豆を盗んだことがバレていた弥平に、白羽の矢が立ったのです。村人に取り囲まれた弥平は、千代に「心配するでねえ。おとなしゅう待っとるだぞ」と言い残して引っ立てられて行き、そのまま帰ってくることはありませんでした。生贄として、土手に埋められてしまったのです。
そして、後に自分の歌が原因で父親が人柱にされたことを知った千代は、誰に話しかけられても口を利かなくなりました。それから何年もの時が経ち、ある猟師がキジの鳴き声を聞き、鉄砲で撃ちます 。猟師がキジの元へたどり着くと、そこにはキジを抱えた千代が佇んでいたのです。千代は「キジよ。お前も鳴かなければ撃たれないで済んだものを」と呟き、そのまま姿を消しました。
それから、千代の姿を見たものは、いなかったそうな。
「キジも鳴かずば」は『まんが日本昔ばなし』のなかでも、屈指の怖さと悲しさをあわせ持つお話であり、多くの方が「辛くて苦しくて忘れられない」「一番心に残っている」エピソードとして名前を挙げています。ささやかな喜びを口にしただけで、父親が殺される。子供のために盗みを働いたとは言え、命を奪われなければいけないほどの罪なのでしょうか。世のなかは理不尽に満ちていることを現代にも伝えてくれるお話として、「キジも鳴かずば」には特別な価値があるように思えます。