『名探偵ピカチュウ』ヒットの秘密は「おじさん化」にあり?
可愛いキャラクターの「おじさん化」が自己肯定感に?

可愛い見た目におじさんの声をあてる作品といえば、映画『Ted』(2012年公開)を思い浮かべます。『Ted』はクマのぬいぐるみが動き出し、話すようになったが、月日が流れ、中年と化した生活を描いたものです。『Ted』は大ヒットして第2作目も公開されました。
さらに遡ると、1999年公開の映画『スチュアート・リトル』も、服を着た白いネズミが成人男性の声で話し、人間として振舞います。こちらは紳士的ですが。声を担当したのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などで有名なマイケル・J・フォックスです。
ただ可愛いキャラクターを登場させるだけでなく、彼らを「おじさん化」させることで、不完全な自分たちと変わらない存在として、観る側を自己肯定させてくれる存在となるのです。そこに、より可愛らしさを見出す時代になってきたとも言えるかもしれません。
この映画のピカチュウの声を担当するのは、『デッド・プール』を演じたライアン・レイノルズです。デッド・プールはおしゃべりで、ブラックユーモアも連発するキャラクターですが、ピカチュウが話している様子も、デッド・プールのようなのです。
日本語吹き替えでピカチュウの声を演じるのは、西島秀俊です。一見、共通点のなさそうな2人ですが、ライアン・レイノルズは、2010年、『ピープル』誌が選ぶ「最もセクシーな男」に選ばれています。一方、西島秀俊も「抱かれたい男ランキング」の上位常連です。つまり、「素敵なおじさま」が可愛いらしいピカチュウを演じているのです。
『ポケモン』を生んだ日本のファンがニヤリとする場面が随所に散りばめられた本作品。字幕も吹き替えもどちらもオススメ。日本発のハリウッド映画『名探偵ピカチュウ』を味わっていただきたいです。
(二木知宏)