『ドラクエ』の王様はみんなケチ?「世界を救え」という割には貧弱過ぎる初期装備
魔王を倒して世界を救う。そんな大冒険に挑む勇者を支援してくれるのが、国を治める王様です。旅立ちにあたって、お金や装備品などを与え、最初の一歩を支えてくれます。しかし、その内訳や支度金の額に問題あり!?
これから世界を救う勇者に、王様はどんな装備を授けるのか?

昨今ではRPGの切り口も多様化し、時代設定やシチュエーション、背景となる文化も大きく異なります。ですが、ファミコン時代はファンタジー世界が主流で、主人公たる勇者を王様が送り出すケースも頻繁に見られました。
これから世界を救う旅に出るにあたり、大事なのは初期装備。いずれ買い換えるにしても、序盤の敵に手こずるかスムーズに倒せるか、立ち上がりに大きな違いが現れます。そしてファミコンRPGの多くでは、王様からの支援がその鍵を握っていました。
魔王を倒すために旅立つ勇者に、王様はどんな支援を施してくれたのか。ファミコンRPGの代表作ともいえる『ドラゴンクエスト』シリーズの初期4作を例に、初期装備の事情を振り返ります。
●初代『ドラゴンクエスト』の王様は、気配りが足りない!?
コンピュータRPGの面白さを、国内の少年少女に広く伝えた初代『ドラゴンクエスト』。本作で、初めてこのジャンルに触れたプレイヤーが多数いました。そんなプレイヤーたちの分身である勇者に、王様は3つの宝箱を与えてくれます。
宝箱の中身は、「鍵」と「たいまつ」、そして120Gです。鍵は、王様の間を出る時に必ず消費するため、実質的にはたいまつと120Gだけ。このお金で装備こそ買えますが、武器や防具は何ひとつ下賜(かし)してくれません。
ですが、むしろ問題はここから。王様がいる城には武器屋や防具屋はなく、装備を整えるにはラダトームの町まで足を運ぶ必要があります。城と町の間はフィールドなので、うっかりすると敵と鉢合わせる可能性も。その道中で万が一戦いになれば、こちらは完全に丸腰。たとえスライム相手でも、何の備えもなしに戦うのは怖すぎます。
120Gという支度金の額にも言いたいことはありますが、素手でモンスターと戦う危険性を考慮しない王様の振る舞いは、少々気配りに欠けているのではと眉を寄せるばかりです。
●『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』から感じた、親子の微妙な関係性
続編の『ドラクエII』は、初代よりもドラマチックな展開で幕開け。ムーンブルクがハーゴンの軍勢に攻め落とされ、かろうじて脱出した兵士がこの事態をローレシアの国王に伝え、その場でこと切れます。
本作の主人公を務めるのは、王の息子──つまり、ローレシアの王子です。この緊急事態を前に、ロトの血を引く者として、ハーゴンに立ち向かうべく旅立ちました。その際に、父親である王様が渡したのは、「どうのつるぎ」と50G。最初から「かわのよろい」を身に着けているので、武具とお金の3点セットを携えて冒険に踏み出します。
初代『ドラクエ』の支度金は120Gでした。そして今回は、どうのつるぎ、かわのよろい、50Gなので、総額で考えると『ドラクエII』の方が恵まれています。ですが、前作も勇者として知られていたとはいえ、王様と直接の関係はない他人。勇者らしい活躍をしてくれるのかまだ分からないので、支度金を絞ってしまうのも無理のない話です。
ですが、今回は紛れもない親子であり、王様と王子という重要な立場にある人物です。王子を一大事に送り出す支度ならば、国を挙げて支援してもおかしくないでしょう。なのに、一般的な兵士と同等の装備と、かわのたてを買うにも足りない50Gのみ。もしかしたら、この親子は何か確執でもあるのか……と、妙に勘繰りたくなります。