『Vガンダム』誕生から30年 明るい子供向けを目指しながらも「トラウマ」連発したワケ
新世代に向けて製作された『Vガンダム』。当初は明るい子供向けとしてスタートした作品でしたが、後年に「トラウマ」などと言われるシーンを連発する作品となります。一体何があったのでしょうか?
SD世代に向けた新時代のガンダムを目指した『Vガンダム』
本日4月2日は1993年に『機動戦士Vガンダム』が放送開始した日。今年は30年目にあたります。『ガンダムシリーズ』の生みの親である富野由悠季監督が手がけた、最後の「機動戦士」がついたタイトルとなりました。
本作誕生のきっかけと言われているのが『SDガンダム』のブームです。通常、子供は3年で卒業、新しい世代と入れ替わると言われていますので、『SDガンダム』で獲得した層を本来のガンダムシリーズに誘導するため、TVシリーズとして放送する本作の制作が決まりました。
そのため、本作ではいくつか今までのガンダムシリーズにない試みがなされ、製作開始時は「明るい本来のロボットアニメらしい作品」を目指したそうです。
確かにガンダムに乗る主人公としては最年少であるウッソ・エヴィンが、幼なじみのシャクティ・カリンや憧れの女性カテジナ・ルースを守るため戦うというストーリーは、往年のロボットアニメのようなシンプルでわかりやすいドラマを目指したものでした。
主役機であるMS(モビルスーツ)「LM312V04 V(ヴィクトリー)ガンダム」は子供にも描けるようなシンプルなデザインとして作られながらも、初代ガンダムと同じく3機合体、さらに変形という要素まで加えられています。このデザインを手がけたのが現在のファンならば誰もが知っているカトキハジメさん。初めてのTVシリーズ参加でした。
このVガンダムが各地でパーツを集めて強くなるというストーリーは、当時の子供にとっては定番化していたRPG(ロールプレイングゲーム)の要素を再現したものだそうです。それがガンダムシリーズ定番のロードムービー的要素と上手くマッチングしました。
TVシリーズとしては初の地球から始まる物語も、これまでのシリーズのイメージを払しょくするためのものでした。また、宇宙世紀としてはそれまでの時代から大きく離れた宇宙世紀0153年という設定も、旧作との関連性を極力見せずに新規ファンを取り込みたいというものだったそうです。
このようにSDガンダムファンの子供たちに向けたアニメと同じく、玩具展開も従来のガンダムとは違ったものがいくつか販売されました。劇中に限りなく近づけた変形合体する1/48サイズの機動合体DX Vガンダム。光と音が出る1/72サイズの光機動Vガンダム。コレクション性の高い1/144サイズの完成品であるMSinPocket(モビルスーツインポケット)などです。
また、ガンプラも「バトルモビルスーツコレクション」というカテゴリーの1/144サイズをメインに販売。当時の『SDガンダム』のガンプラ「BB戦士」でおなじみのランナーロックが採用され、ふたつのランナーを合わせることで複数のパーツが同時に完成するという仕組みとなっています。さらにシールの採用で比較的簡単に完成できるようになっていました。
こういったように当時の子供たちをターゲットにしていた『Vガンダム』でしたが、やがて物語は最初の想定とは大きく異なる方角へと流れていきます。