「ヤンキー漫画」は40年でバラエティ化した? ケンカと抗争の世界から「弁当男子」まで
不良少年たちの世界を描いたマンガ、いわゆる「ヤンキーマンガ」といえば、ケンカと抗争、男の友情が主役の熱い世界……そんなイメージの人も多いはず。ですが、現在の「ヤンキーマンガ」は「弁当男子」や女の子が主役になっているものも。80年代のブームから現在にかけて、「ヤンキーマンガ」はどのように変化したのでしょうか。
ケンカだけじゃない! 多様化する「ヤンキーマンガ」
転校を機に不良デビューした2人の少年が活躍するマンガ『今日から俺は!!』(西森博之)の実写映画化が2019年発表されました。不良たちが主役の「ヤンキーマンガ」といえば、男の世界というイメージが強く、実際チーム同士の抗争、ケンカに友情、絆といったキーワードがメインの「王道」作品は多いですが、時代とともにそのトレンドも変化してきています。
たとえば、お弁当づくりでヤンキー高校の頂点をめざす『頂き!成り上がり飯』(奥嶋ひろまさ)や、正統派ヤンキーケンカマンガと思いきや、実は「猫のヤンキー擬人化」という『NYANKEES』(岡田淳司)、ワルな女の子たちを虜にする能力を手に入れてしまった気弱な男子高校生が主人公の『六道の悪女たち』など、現在は異色ともいえる不良マンガが花盛りです。
こうした作品群の特徴のひとつは、他のジャンルとのハイブリッドとなっていること。『頂き!成り上がり飯』なら「ヤンキー×グルメマンガ」、『NYANKEES』なら「ヤンキー×動物マンガ」、『六道の悪女たち』なら「ヤンキー抗争×ラブコメ」といった具合に、人気ジャンルと絡めた内容になっているのです。
しかし、そもそもこうしたバラエティ豊かな「「ヤンキーマンガ」」が登場したのにはどういう背景があるのでしょうか?
不良が主人公、題材のマンガは古くからありますが、暴走族文化などと結びついたいわゆる「「ヤンキーマンガ」」は、80年代にブームを迎えました。1982年に連載スタートした『湘南爆走族』あたりがその先駆けです。
以後、90年代前半にかけて『カメレオン』『ろくでなしBLUES』『湘南純愛組!』など、多くのヒット作が生み出されました。昨年ドラマ化され、先日実写映画化も発表された『今日から俺は!!』も1988年にスタートしています。
この時期の作品は多くの場合、ケンカや抗争が盛り上がりの中心にありつつ、学園もの、ラブコメといった側面も持っています。80年代後半から90年代に入るころにはすでに現実世界ではリーゼントなどの不良スタイルは時代遅れとなっており、コメディ的な側面も色濃いですが、それでもこの時代のマンガにおけるヤンキーは「成り上がり」のツールとして機能しています。