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異世界転生ジャンルの異端『異世界おじさん』は、30代の心に悲哀の渦を起こすマンガ

17歳の頃にトラックにはねられて昏睡状態に陥った叔父は、実は剣と魔法の異世界「グランバハマル」に転生してしまう。17年後に昏睡から目覚め現実世界に戻ってきた叔父を待ち受けていたものとは──?『異世界おじさん』は、30代のハートを狙い撃ちする、「異世界転生もの」の異色作です。

美男美女の世界でオーク扱い…過酷すぎる異世界のはじまり

『異世界おじさん』第1巻(KADOKAWA)
『異世界おじさん』第1巻(KADOKAWA)

 いまやマンガやアニメ、小説の一大ジャンル「異世界転生もの」ですが、Webマンガサイト「ComicWalker」で2018年6月から連載されている『異世界おじさん』(殆ど死んでいる 著、KADOKAWA)は、「異世界から帰ってきた」という異色の設定で注目を集めています。

 たかふみの叔父は、17歳で交通事故に遭い昏睡状態に。17年後、34歳となった叔父が目覚めると、彼は異世界「グランバハマル」に転生していたといいます。叔父の頭がおかしくなったかと思いきや、叔父は「異世界にいた証拠を見せよう」と魔法を繰り出し、たかふみを驚愕させるのです。

 異世界で身につけた能力を使ってYouTuberデビューした叔父とたかふみの共同生活。その中で語られるのは、血と涙とへし折られたフラグだらけの残念すぎる異世界ファンタジー・ライフだった……。

 異世界転生ものといえば「異世界に転生したらチートスキルで無敵状態」「現代科学を持ち込み勇者に」といった設定を思い浮かべますが、『異世界おじさん』はその真逆を爆走するコメディ。

「グランバハマル」は、村人さえも美男美女の世界。転生直後、人を見つけて駆け寄ると彼のあまりの醜さにオークの亜種と勘違いされ狩られかけ、干ばつに苦しむ村で現代科学の知識と呪符を使い「水が湧き出る壺」を生み出せば、感謝どころか宗教的にアウトだったのか吊るされかけます。

 酸いも甘いも知った30代には、「異世界転生して無双」よりもむしろこちらのほうが現実感があります。異世界に行っても、無敵のスキルがあっても、善行が裏目に出たり、勘違いされたり……ファンタジーの世界にもそんな現実が待ち受けているのではないでしょうか。その悲哀がしょうもなく笑えて、愛おしくもあります。

 叔父が17歳だった頃は、ちょうどゲームハード戦争の最盛期。叔父が愛する「SE●Aハード」が過去のものとなったことに打ちのめされ、ガラケーがなくなってしまったことや『こ●亀』の連載終了に驚き、ネットでは語尾に「ダブリュー」をたくさんつけたコメントに困惑。

 17年間の間に変化したさまざまなもの。30代が過ごした青春時代のノスタルジックなあるあるネタもたまりません。特に、ゲーム好きだった人はゲームネタだけで盛り上がれること間違いなし。

【画像】切なすぎ!『異世界おじさん』読者の心えぐるシーン(6枚)

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