『ロボット刑事』誕生から50年 「変身ブーム」の真逆を行き、時代を追い越してしまった?
変身ヒーローブーム全盛期だった1973年に放送された『ロボット刑事』。あえてブームに逆行するように登場した「変身しないヒーロー」には、来るべき先を見据えた戦略がありました。その特異な設定の数々を振り返ってみましょう。
当時は画期的だった「変身しないヒーロー」

本日4月5日は1973年に特撮ヒーロー番組『ロボット刑事』が放送開始した日。今年で50年が経ちました。特撮ヒーロー番組全盛期だった時代に、意欲作として誕生した本作について紐解いていきましょう。
本作は特撮ヒーロー番組が大人気だった時代の波に乗って、東映が『仮面ライダー』と同じくマンガ家の石森章太郎(後の石ノ森章太郎)先生に原作を依頼、新たな枠としてフジテレビ系列で放送した作品です。しかし、当時の特撮ヒーローの定番だった「変身」ではなく、主人公の「K」は人間にならずロボットの姿のまま物語を進める異質な存在でした。
これは『仮面ライダー』をはじめとする東映特撮ヒーロー番組を数多く手がけた平山亨プロデューサーのアイデアだったそうです。これに関して平山さんは、「ボクはひねくれてるから、あえて流行りとは逆に変身しないヒーローを作ってみた」と後年、発言なさっていました。
しかし、「変身しないヒーロー」の誕生はそれだけが理由ではありません。本作の企画書には「変身ブームの次はロボットブーム」と記されていました。前年に放送開始した『マジンガーZ』の人気が徐々に上がってきたことから、いち早く新しいタイプの特撮ヒーローを模索していたのでしょう。
事実、放送では主役であるKのサポートとして、修理や補給を行う巨大ロボ「マザー」が登場しています。さらに企画段階ではKが合体する巨大ロボ「ファザー」も予定されていました。つまり平山さんは、この後に来ることになる巨大ロボットブームをすでに予見していたことがわかります。
しかしロボットが主役の仮面劇は、生身の役者と違って顔の表情が出せないというリスクがありました。そこでKの目の色をその時の感情によって変えることで、子供にわかりやすい表情を生み出すことに成功します。これは後に『アクマイザー3』、『がんばれ!! ロボコン』といった作品を重ねて、だんだんと進化していきました。
他にも特徴的だったのが声の出演です。これまでの東映特撮番組ではテアトル・エコーや東京俳優生活協同組合が担当することが多くありましたが、本作では東映動画(現在の東映アニメーション)と深い関係にあった青二プロダクションを中心にしていました。
そのため、主役のKの声は『あしたのジョー』で力石徹、翌年に『宇宙戦艦ヤマト』で島大介を演じた仲村秀生さん。ナレーターは野田圭一さんというアニメでは有名ながら、特撮番組が初めてという方が担当していました。敵側のバドーロボットも同様です。
もちろん演技面を考慮しての起用ではなかったかもしれませんが、他の特撮ヒーロー番組との差別化は果たしていました。