『サザエさん』の「お隣さん」は2代目? 消された初代・伊佐坂家の謎
国民的アニメ『サザエさん』の隣人といえば? 多くの人は「伊佐坂先生」と答えるでしょう。昭和の頃から『サザエさん』を観ていた人は「浜さん」と答えるかもしれません。しかし、それ以前に住んでいた謎の一家を知っていますか?
伊佐坂先生に髪がある!?

磯野家の隣人といえば誰? と問われれば、『サザエさん』を見ている人ならば即座に「伊佐坂先生」と答えるでしょう。昭和の頃の『サザエさん』(あるいは火曜日の『まんが名作劇場 サザエさん』)に親しんでいた人なら「浜さん一家」と答えると思います。
しかし、昭和40年代に『サザエさん』を見ていた世代、つまり今、50代、60代の人たちにとって、磯野家の隣人といえば、まず思い浮かぶのは「初代伊佐坂家」なのかもしれません。
現在、磯野家の隣に住んでいる伊佐坂家は、作家の伊佐坂難物先生、妻のお軽さん、長男で浪人生の甚六さん、長女で女子高生の浮絵さんという4人家族。ハチという犬を飼っています。初代伊佐坂家は、現在の伊佐坂家とまったく同じ家族構成、まったく同じ名前でありながら、見た目がまったく異なるという一家でした。以下、詳しく見ていきましょう。
初登場は1970年8月30日放送の「巨匠イササカ氏あらわる」。タイトルでわかるとおり、初代の伊佐坂難物先生も二代目の伊佐坂先生と同じく恋愛小説家でした。ハゲている二代目とは違い、頭髪はかなりあり、ワッチ帽がトレードマーク。和装が基本で、パイプと紙巻きタバコの両方をたしなみます(サザエが拝借してタバコを吸う場面もありました)。
連載の依頼をすべて断るほどの売れっ子で、どうしても連載を引き受けてほしい出版社が、隣人で仲の良いサザエを編集者として雇ったことも。三河屋の三平さんも伊佐坂先生の小説の大ファンです。かなりの有名人でもあり、雑誌の座談会に出席したり、テレビ番組に出演したり、偽物が現れたりすることもありました。
伊佐坂先生の妻・お軽さんは、フネと女学校時代の同級生。30年ぶりの再会を喜んだ後、ワカメを見て「お孫さん?」と勘違いしますが、今よりもずっと早婚早産だった昭和40年代なら無理もありません。
メガネに和装というルックスは二代目のお軽さんと一緒ですが、顔にほうれい線がなく、フネよりもかなり若く見えます。サザエと一緒にレオタードを着て、美容体操に励むこともありました。気持ちも若かったようです。
甚六さんと浮絵さんは、なんと初登場時、カツオとワカメと同じぐらいの小学生でした。ただし、隣家に小学生がふたりもいるのはお話を作り辛かったのか、それとも単なる手違いだったのかわかりませんが一度しか登場しませんでした。