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『ウルトラマンA』の超獣の造形は「極限状態」が生んだ? 「手の赴くまま描いた」

『ウルトラマンA』に登場した「超獣」は、今みても正気の沙汰とは思えないデザインです。一体、どの様な環境で生まれたのか。当時のインタビューから紐解きます。

人は極限状態の時「超獣」を生み出す?

レッドジャックが表紙の『円谷怪獣デザイン大鑑1971-1980 豪怪奔放』(ホビージャパン)
レッドジャックが表紙の『円谷怪獣デザイン大鑑1971-1980 豪怪奔放』(ホビージャパン)

 ウルトラシリーズにはたくさんの怪獣が登場し、今もなお子供たちに大人気です。とりわけ、初期の成田亨さんがデザインした怪獣たちは、その洗練された造形美から芸術面においても高い評価を獲得しています。

 一方、『ウルトラマンA』に登場した、「超獣」たちも忘れてはなりません。ベロクロン、ユニタング、バラバ……それはもう(成田デザインを基準にすれば)一度見たら網膜に焼き付いて離れない、ド派手なビジュアルが特徴です。最近では再評価も進み、たとえば超獣「アリブンタ」は、令和以降のウルトラシリーズにもしばしば登場します。

 それにしても、この超獣たちは眺めれば眺めるほど、「正気の沙汰ではない」デザインに思えてきます。いったい、どのような環境で彼らは産声をあげたのでしょうか。2021年12月に刊行された、『円谷怪獣デザイン大鑑1971-1980 豪怪奔放』(監修:円谷プロダクション/編著:鶯谷五郎)を参照しながら紐解きましょう。

 超獣の代表的なデザイナーは2名、井口昭彦氏と鈴木儀雄氏です。井口氏のインタビューによれば、「超獣」のコンセプトに関する綿密な打ち合わせはなかったとのこと。最初期は「宇宙怪獣と地球の生物を融合して生み出す合成生物」という設定が提示されていたようで、宇宙生物とサンゴを合わせたベロクロンは、まさにその代表例といえます。とはいえ、その後は台本に書かれたわずかな文言を頼りに、手探りで超獣をデザインしていました。

 もうひとりのデザイナー、鈴木氏は当時の制作環境がいかに時間に逼迫していたかを語っています。着ぐるみ造形担当、開米プロダクションの方から「儀雄、早く描け」と急かされるのは日常茶飯事。台本をもらった夜にはデザインに取り掛かり、翌日の午前中に開米プロに渡すという日々を送っていたとのことです。

 この目まぐるしさのせいもあってでしょうか、鈴木さんは自身が最初に担当した超獣の記憶すら、曖昧だと言います。途中からはもう、「手の赴くままに描く感じ」でデザインしていました。ちなみに、井口氏もご自身がデザインされた超獣「サウンドギラー」を改めて眺め、「全っ然覚えがない」と語っています。当時の過密スケジュールぶりがうかがい知れます。

「トゲトゲ」や「ヒラヒラ」や「ツブツブ」、過剰とも言える装飾が超獣のデザインの特徴です。それはまさに多忙を極め、「手の赴くまま」に生み出された無意識的な産物。ひるがえれば、井口氏と鈴木氏の心の奥底にいる、最も純粋な怪獣のデザインだった、とも言えるかもしれません。

(片野)

【画像】日常生活大変そう? 「装飾」が凄いデザインの超獣たち(6枚)

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