『ガンダム』ヤラれても戦わない、地球連邦軍の「不自然」な態度 シャアの粛清も納得?
アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する地球連邦は、1年戦争以降「総力戦で戦わない」国家となっています。『機動戦士ガンダムZZ』で、ダブリンにスペースコロニーを落とされ、首都ダカールを占領されても、ネオ・ジオンとの戦いを元々叛乱軍であるエゥーゴに任せ、何もしないのです。なぜ連邦は戦わないのでしょうか。
地球への攻撃は意味がない?
地球連邦とは、アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズに登場する架空国家です。地球とスペースコロニーと、月面都市の一部を領土にしています。
最初の作品である『機動戦士ガンダム』では、宇宙世紀0079年にスペースコロニー国家であるジオン公国により、スペースコロニー群「サイド」が壊滅させられ、地球にもスペースコロニーを落とされて、全人口の半数が死滅するという大損害を被ります。
連邦軍は一年戦争を戦い、ジオン公国を打倒したのですが、宇宙世紀0083年にジオン残党のデラーズフリートが再び、コロニー落としを敢行します。連邦軍はデラーズフリートを壊滅に追い込みますが(『機動戦士ガンダム0083』)、一致団結して地球防衛のために戦ったのはここまでです。
0087年には、地球連邦軍はジオン残党狩りを目的とした特殊部隊ティターンズと、スペースノイドの権利を擁護するエゥーゴに分裂して、内乱状態となります。エゥーゴが勝利しますが、その後で、地球にハマーン率いるネオ・ジオンが攻撃を開始します(『機動戦士Zガンダム』)。
0088年の『機動戦士ガンダムZZ』で、ネオ・ジオンは地球政府の高官が住むダブリンにスペースコロニーを落とし、首都ダカールをも占領します。地球連邦からすれば、これ以上ない暴挙のはずですが、この時代の地球連邦軍は、スペースコロニーの落下を阻止しようとしません。
ハヤトのセリフによれば「地球連邦はコロニーが落ちても何もしない。連邦政府の望みは地球の人口が減ることだ」とのことで、実際、地球連邦はネオ・ジオンと戦わず、ハマーンの政治的要求を受け入れて、サイド3を割譲しています。エゥーゴがハマーンを打倒しなければ、地球圏はネオ・ジオンに支配されていたかもしれません。
そして、劇場版アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の舞台となる0093年で、シャアの率いる新生ネオ・シオンは、地球に小惑星「5thルナ」を落とします。地球連邦政府はそれでも、シャアと交渉ができると考え、スペースコロニー「スウィート・ウォーター」や、小惑星「アクシズ」をネオ・ジオンに割譲します。
なぜ地球連邦は、ここまで地球への攻撃に対して無反応なのでしょうか。
シャアは『逆襲のシャア』で、「地球に住む者は自分のことしか考えていない。だから抹殺すると宣言した」「人類が絶対に戦争を繰り返さないように、地球圏の戦争の源である、地球に居続ける人々を粛清する」と宣言しています。もし「地球が特権階級の楽園」なのであれば、特権階級たちは、自分たちの聖域・地球を守ろうとするはずです。
ちなみにシャアは、元々は大量虐殺を是とする人物ではありません。『機動戦士Zガンダム』のダカール演説時には、ダカールの町への被害を顧みずに攻撃を続けるティターンズに対して「見るが良い! この暴虐な行為を」と批判しています。
また、ティターンズの毒ガス攻撃で全滅したコロニー内で、虐殺を否定するライラに「見てわからんのか。地球連邦が第二のザビ家になろうとしているのが、わからないのか」と反論していますから、ザビ家の虐殺行為には批判的であることもわかります。
地球連邦が、地球上の人命に無関心で、シャアが「人類の粛清としてアクシズを落とすことに、それほど罪の意識を感じていない理由」ですが、筆者は「人口」だと考えます。
一年戦争で「総人口(110~120億人のようです)の半数が死に至らしめられた」というナレーションがあります。ここでの犠牲者の大半が、開戦時に攻撃されたサイド1・2・5であり、コロニー落とし自体による人口被害はそれほどなかったと考えられます。
「宇宙世紀0050年に総人口110億のうち、90億人が宇宙に上がった(つまり、地球人口は20億人)」「コロニー落としの被害は20億人」という資料がありますが、0079年でも人口が変わっていないのなら、20億人いるはずの地球の人口はコロニー落としで「ゼロ」になってしまいますし。
連邦軍が地上戦で大部隊を編制したり、大艦隊を宇宙に撃ちあげている以上、一年戦争時の地球には大きな人口がいたことは間違いありません。
なお「0050年に宇宙移民が停止された後、一度、スペースコロニーに上げられた人口の一部が地球に戻った」と考えるなら「全人類を宇宙に上げるという目標を、地球連邦が放棄した」という、劇中描写と合致します。
0050年におけるサイド3の人口が20億人という資料もあります。その一方で劇場版『機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙』で「サイド3の人口は1億5000万人」と語られています。「地球連邦が、独立を叫ぶサイド3を危険とみて、地球に人口を戻させたから、人口が20億人から1億5000万人に減った」とするなら、辻褄が合います(ジオンが「選民思想」を持つ理由にもなるでしょう。この場合、サイド3にいるのは「選んで残った人たち」だからです)。