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例えるなら「読む映画」? アニメの手法で描く日本発ヒーローコミック『戦隊』の挑戦

アメリカンコミックをベースとしつつ、アニメ映像の表現手法を取り入れた日本発のヒーローコミック『戦隊』を書籍化しようと、クラウドファンディングが行われています。作品づくりと「ヒーロー像」の両面で新たなジャンルを築こうとしているその挑戦について、関係者に話を聞きました。

映像づくりのノウハウ結集してコミックを描く

『戦隊』作中のシーン
『戦隊』作中のシーン

『鉄コン筋クリート』(2006年)や『海獣の子供』(2019年6月7日公開予定)などの劇場アニメを制作している「STUDIO4℃」と 日本初のヒーロー・コミック・レーベル「シカリオ」がタッグを組み、レーベル第1弾となる『戦隊』の書籍化を目指してクラウドファンディングを実施しています。

 同作品の大きな特徴は、アメリカンコミックのフォーマットにアニメ映像の表現手法やチームでの制作体制を取り入れた点にあります。同作品で作画を担当するのは、アニメーション監督の田中孝弘さん。田中さんは大友克洋監督『スチームボーイ』の原画や「あにめたまご2016」上映作品『UTOPA』の監督などを務めています。

 田中さんは全ページフルカラーで描いた同作品について、「映像表現としての心情を意識した画面構成と空気感、そして時間の概念が通常のマンガと大きく違っていると思います」と話します。

 特に、映像を感じられるようなコマ割りにこだわっていて、例えば1話のハロウィンのシーンでは、騒がしいお祭りの中での2人だけの時間、周りの喧騒と夢の中のような印象が対比になるように描き、2話の屋上での会話シーンでは、古き良き日本映画のように多くを語らないことで、より雄弁にキャラクターの心情を描写したといいます。

 アニメ制作の現場では、関係団体の意向や表現的な自主規制といった制約にしばしば直面することがあります。今回の『戦隊』の制作は、田中さんにとって「自由なグラフィック表現」に挑戦する貴重な機会だったといいます。

「アニメなどの映像作品には、音の重要性と、キャラクターが動く(=演技する)という身体的魅力がありますが、今回、静止画という制約のなかで試行錯誤できたことで、映像制作における時間感覚と空間感覚、感情表現などを再度考えるきっかけになりました」(田中さん)

 一方、『戦隊』はそのストーリーにおいても、これまでにない「ヒーロー像」への挑戦があるといいます。

【画像】映像的表現が満載、『戦隊』のシーンと制作の裏側(12枚)

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