イクラちゃんは女の子だった? 原作『サザエさん』のびっくりする設定
国民的長寿アニメ『サザエさん』は、50年以上放送されています。現代人はアニメのサザエさんたちに慣れ親しんでいますが、原作マンガが新聞に初めて掲載されたのは1946年のこと。戦後間もなく始まったマンガには、アニメにない設定があります。イクラちゃんが女の子、タマ以外のペットが存在など衝撃の裏設定とは……?
『サザエさん』に隠されたマンガでしか見られない設定とは…?

国民的長寿アニメ『サザエさん』は70年以上前に誕生した、長谷川町子先生の新聞連載の四コママンガシリーズが原作で、原作マンガも単行本、文庫本合わせて累計発行部数8600万部を超える大ヒット作です。そんな原作『サザエさん』では、誰もが当たり前と思っていたサザエさんたちの設定が違っています。
今回は3つの原作だけの意外な設定を紹介します。ひとつ目は、言わずと知れた癒しの幼児キャラ・イクラちゃんについてです。イクラちゃんは磯野波平の甥であるノリスケとタイコさんの子供で、アニメでは男の子として描かれていますが、原作のマンガでは「初期は女の子だった」説があります。
原作ではノリスケとタイコさんの子供には名前はなく、「サザエさんヒストリーブック 1969-2019」に載っているインタビューによると、アニメ放送開始から脚本を務めてきた雪室俊一さんの娘がイクラが大好物だったことで、「イクラちゃん」というオリジナルの名前が付けられたそうです。
原作マンガには、「ノリスケとタイコさんの子供は女の子」と思わせるエピソードがいくつかあります。まず、1955年11月7日の朝日新聞に掲載された、ノリスケが生まれた子供の名前を役所に届けにいくエピソードが有名です。ノリスケは「ナミエ」という名前に決めていたものの、途中で恰幅の良い女性が旦那さんから「ナミエ」と呼ばれているのを見て、考え直すという場面が描かれていました。その他、タイコさんが雛人形を買いに行くエピソードもあります。
また、1964年2月24日の朝日新聞には「磯野家の家族構成」のイラストが載せられており、その時にタイコさんが抱いている赤ちゃんの名前は「チドリ」です。このように、「イクラちゃんは女の子だった」説の根拠はいくつかありますが、段々と原作でも男の子として描かれるようになっていきました。
その他、波平が「T・T・K」というグループの理事を務めていることも、原作だけの設定です。「T・T・K」とは、「都下禿頭会」(とかとくとうかい)の略であり、波平のように頭部が禿げた人が集まっている会のようです。
波平「T・T・K」理事説が登場したエピソードでは、カツオが波平に「(友達の)ハラダ君のお父さんP・T・Aの幹事だっていばるのさ」と声をかけると、波平は「お父さんだってT・T・Kのりじをしとる」と自ら名乗っています。とはいえ都下禿頭会は名前だけが出てきて活動内容が謎に包まれているため、ネットでは「アニメで都下禿頭会にクローズアップして欲しい」とアニメでの登場を望むファンもいます。
そして3つ目の衝撃設定は、磯野家で飼っているペットが、愛猫のタマ以外にもいることです。アニメでは磯野家の唯一のペットとして家族同様に愛されているタマですが、マンガにはタマも登場していますが、犬・リス・金魚・カメなどもペットとして登場しています。しかも犬は3匹もいて、エルザ・ジョン・太郎というちょっとサザエさんらしからぬ名前がつけられていたようです。
1966年4月2日の朝日新聞掲載の回には、サザエさんが白い犬に「エルザ! ごはんだよ」と呼びかける場面がありました。ペットをたくさん登場させているのは、「長谷川町子の動物絵本」という本も描いている、長谷川町子先生の動物好きがうかがえる設定です。
前述の「サザエさんヒストリーブック 1969-2019」によると、アニメ『サザエさん』を制作している株式会社エイケンでは、「文芸」という部署が原作の四コママンガを必ずひとつ以上選び、毎週3つ作られるエピソードのシナリオを脚本家に発注しているそうです。それでも、まだアニメで掘り下げられていないエピソードもあるので、この機会に原作を読んでみるのもいいかもしれません。
(LUIS FIELD)