マンガ・アニメで描かれる「動物」のウソ・ホント 生物の専門家が解説
アニメやマンガのなかで描かれる動物の描写は、動物の専門家が見ると「誤り」に見えることもしばしばあります。専門家によると、あくまでフィクションと理解したうえで、動物の「リアル」を通して見てみることで、作品をより深く楽しめるというのです。
「パンを食べるヘビ」は実在しない?
マンガやアニメ作品に登場する動物には、プロが思わずうなってしまうほど生き物の生態が巧みに描いた例がある一方、思わずツッコみたくなる「間違い」を犯しているケースもあるようです。どうぶつ科学コミュニケーターの大渕希郷さんが解説します。
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私は自他共に認めるマンガ・アニメ大好き人間です。高校生の頃は、将来は漫画家になるか、生物学の世界に入るか、真剣に悩んだほどです。
結局、生物学の世界へ進むことにしたわけですが、研究室には、マンガ・アニメ好きの仲間がたくさんいました。勉強の合間、研究室では、「あのアニメのシーンが、現実に起きたらどうなるか」ということを、半分冗談、半分本気で、よく語っていたものです。
マンガやアニメはもちろんフィクションで、その世界観を楽しむものです。しかし、我々「動物屋」が見ると、フィクションとはいえ、思わず「オイオイ」とツッコみたくなるようなシーンもあります。
●『ジョジョ』第5部のヘビ
荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)は、登場人物の人間関係が色濃く描かれていて、大好きな作品です。特に「日常性」が描かれている第4部「ダイヤモンドは砕けない」は、疲れたときなどに度々読み直して元気をもらっています。
同作品の第5部 「黄金の風」3話「塀の中のギャングに会え」で、スタンド能力で創り出したヘビが美味しそうなパンに思わず食らいついてしまうというシーンがあるのですが、ヘビは絶対にパンは食べません。
私も愛用している爬虫類のデータベースサイト「THE REPLTILE DATABASE」によれば、ヘビの種数は3700種以上。その中に、植物食のヘビはいません。
ただし、ゴールド・エクスペリエンス(「黄金の風」の主人公ジョルノのスタンド能力。殴った物に生命エネルギーを与えることができる)で産み出されたヘビが実在する既知のヘビなのかどうかはナゾなこと、さらに最近ではインターネット上にブドウを食べるヘビの動画がアップされたこともあり、その可能性はゼロではないのかもしれません。
ブドウを食べるヘビの動画については、これから真偽を確認したいと思っています。『ジョジョ』には、ヘビ以外にもたくさんの生物が登場し、よく調べられていると思います。