生物・生態学の描写がすごいアニメ3選 生物学の専門家も感銘
アニメ作品にはさまざまな動物が登場しますが、専門家も思わずうなってしまうほど生き物の生態が巧みに描かれるアニメ作品もあります。どうぶつ科学コミュニケーターの大渕希郷さんが解説します。
生態学の入り口を教えてくれる『七つの海のティコ』
筆者(大渕希郷/どうぶつ科学コミュニケーター)は、自他ともに認めるマンガ・アニメ大好き人間です。動物をリアルに描いたアニメ作品はたくさんありますが、今回は特に、生物学の視点から世界観の描き方が巧みな3作品を紹介したいと思います。
振り返れば、そもそも私が生物学の世界に入ったのも、いくつかのアニメ・漫画作品に影響を受けていると感じています。そのひとつがアニメ『七つの海のティコ』です。主人公ナナミの父親スコットは海洋生物学者で、彼の生き物を生態的にとらえようとする考え方に強い影響を受けました。
スコットは、伝説のヒカリクジラを求めて世界中の海をナナミたちと旅しています。その旅路の途中で、大学時代の同級生ルコント博士に再会します。
スコットとルコントは、同じ生物学者でも分野が少し違うようで、ルコントの方は遺伝学など個々の生物の体内の生命現象を研究しています。対して、スコットは、これは私の想像も入りますが、生態学や進化学など個体同士の関係や生命の歴史に興味があったようです。
俗に、視点の違いから、前者をミクロ生物学、後者をマクロ生物学などということがあります。また、ルコントの研究分野では直接生物を捕らえる必要が、スコットよりもあると思われます。
まさにルコントは研究調査のために、銛(もり)を使ってシロナガスクジラに発信機を打ち込んだりしていました。考え方の違いからか、スコットはルコントに、「生き物を切り刻み、一つの遺伝子の働きが解明されたところで、本物の生物がわかったことになどならない」と説きます。
当時、小学生だった筆者の記憶に深く深く刻まれることになる言葉です。
筆者が単純な性格の男子ということもあったのでしょうが、スコットの考えに強く惹かれ、生態学や進化学を勉強したいと思うようになります。もちろん、今では遺伝学はじめミクロ生物学も重要な学問であることは理解しています。そもそも、ミクロ生物学が発展させたバイオテクノロジーがマクロ生物学の研究に応用されるケース、またその逆のケースも今ではよくあることです。