生物・生態学の描写がすごいアニメ3選 生物学の専門家も感銘
動物の社会システムを未来描写に反映、『新世界より』
第28回日本SF大賞(2008年)を受賞した、貴志祐介さんの小説『新世界より』が、2012年にアニメ化されました。貴志さんの作品はほかにも、『悪の教典』『青の炎』などが映像化されています(ちなみに、貴志祐介さんは経済学部卒です)。
『新世界より』は、筆者が社会人になってから原作小説・アニメ・漫画を一気に読んでしまうくらい、どハマりした作品です。今より1000年後の未来を描いた作品ですが、サイコキネシス(念動力)に目覚めた人間たちによる、文明崩壊後の世界になります。
ネタバレしない程度に、生物学的、科学的に面白い点をほんの少しだけお伝えしたいと思います。
1000年後の世界では、人びとはみなサイコキネシス(作中では、呪力もしくはPKと呼ぶ)を持っています。そのため、サイコキネシスによる対人攻撃が問題にならないよう、人が人を傷つけることがないように心理学的に教育されていたり、あるいは動物行動学、遺伝学的に改良されていたりするのです。それらの方法が、非常によく調べたうえで描いているなあと、感心させられました。
たとえば、ボノボという類人猿がアフリカに実際に生息しているのですが、彼らの群では暴力的争いがほとんど起こらないとされています。何かしら緊張や興奮が高まると、暴力ではなくてスキンシップや性行動を行うことで鎮めるのです。それを、劇中ではサイコキネシスによって人間に組み込んだりしています。
あまり書くとネタバレになってしまうので、興味があったらぜひご覧になってください。劇中の人間ドラマももちろん面白いですよ!
(大渕希郷/どうぶつ科学コミュニケーター)
大渕希郷(おおぶち・まさと)
どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。著書に「絶滅危機動物」「爬虫類・両生類」(いずれも学研ポケット図鑑)、「絶滅危惧種 救出裁判ファイル」「動物進化ミステリーファイル」(いずれも実業之日本社)など。愛称はぶっちー。公式ホームページ(http://www.sky.sannet.ne.jp/masato-oh/)