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ファミコン少年が熱狂した「16連射」の始まりと終わり――ゲームライターが語る

誰もが高橋名人を真似て試行錯誤

1985年発売のファミコンソフト『スターフォース』。攻略に連射力が必要とされるシューティングゲームだった(写真提供:たまじぃ☆ミssdc68k)
1985年発売のファミコンソフト『スターフォース』。攻略に連射力が必要とされるシューティングゲームだった(写真提供:たまじぃ☆ミssdc68k)

 このとき高橋名人のプレイを初めて見た筆者の魂に、「この人は本当にゲームの名人なんだ!」という、強烈な憧れの感情が刻みこまれたのです。

 同じように高橋名人に憧れを覚えた少年たちは、当然のように「16連射」の真似をしていました。筆者も高橋名人のフォームを真似ては「16連射!」と叫び、どうすればもっと早く連射できるのか、高橋名人に追い付けるのかと、試行錯誤を繰り返していました。

 そんなある日のこと、『コロコロコミック』の最新号を開いた筆者の目に、ある新商品の広告が飛び込んできたのです。

 その名は「ジョイボール」。後に『星のカービィ』を世に送り出す「HAL研究所」が開発した、世界初の連射機能を搭載したファミコン用コントローラーでした。

連射時代の終焉、消えることのない憧れ

世界で初めて自動連射機能を搭載した、ファミコン用コントローラー「ジョイボール」 (写真提供:たまじぃ☆ミssdc68k)
世界で初めて自動連射機能を搭載した、ファミコン用コントローラー「ジョイボール」 (写真提供:たまじぃ☆ミssdc68k)

 わざわざ必死にボタンを連打しなくても、1秒間に15回の連射ができる! さっそく親にねだりましたが……買ってもらえませんでした。

 しかし、このジョイボールの登場こそが、連射に燃えた少年時代の終わりの始まりだったことに、このときの筆者はまだ気づいていなかったのです。

 翌1986年、『スターソルジャー』が発売され、やはり高橋名人は16連射で大活躍をしていましたが、少しずつ状況は変化していました。

 同年、ほかならぬハドソンから、秒間15連射の機能を持つ「ジョイカードMK.2」が発売されたのです。価格も安く、子供が小遣いをためれば手が届く値段だったので、筆者も頑張って購入しました。ちなみにこの「ジョイカードMK.2」、元々は高橋名人が自作したコントローラーが原型になっているそうです。

 その後も「ホリコマンダー」などの連射機能付きコントローラーが次々と発売され、ファミコンで連射力を競い合った時代は、今思い返せばあっという間に過ぎ去ってしまいました。時間にして、2年もなかったかもしれません。

 アーケードゲームではその後も、東亜プランの『TATSUJIN』など、連射力を必要とするシューティングゲームが続々と登場し、筆者もかなりやりこみましたが、「16連射」に燃えた日々に比べれば、それほど熱くなることもありませんでした。

 気づけば2019年。昭和の時代に高橋名人が登場してから平成をまたぎ、34年の年月が流れ、令和の時代を迎えています。それでもなお、「16連射」の文字は、高橋名人への憧れとともに、今も筆者の胸に焼き付いています。

(早川清一朗)

【画像】連射時代を彩ったソフトとハード、そして高橋名人!(7枚)

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