他のRPGができなくなる? 「ドラクエ病」患者の「リハビリ」方法とは
国民的RPG「ドラゴンクエスト」シリーズをプレイし続けると、他のRPGがプレイしにくくなる現象が起こります。これを「ドラクエ病」と勝手に称し、その治療の経過をここに記します。
一度、罹るとなかなか治らない「ドラクエ病」の治療法
ある意味、これは「闘病の記録」と言えるかもしれません。
日本を代表するRPG『ドラゴンクエスト』シリーズは、名だたる国産RPGのなかでも、ぶっちぎりの知名度と人気を誇っています。その最大の魅力は、なんといっても「王道」であることです。シンプルなゲームシステム、文学性の高いドラマ、魅力あふれるキャラクターや魔物たち……他のRPGは知らなくても『ドラクエ』は大好きという方も多いでしょう。
そしてこの『ドラクエ』だけはやったことがある、という方は気づかぬうちに『ドラクエ』しかできない体になっている可能性があるのです。世に言う「ドラクエ病」です(あるいは、そんな言葉ないかもしれませんが)。
何を隠そう、筆者もかつて「ドラクエ病」患者のひとりでした。初めてプレイしたRPGは『ドラゴンクエストIII』で、以降、他ジャンルのゲームはやっていましたが、RPGだけは『ドラクエ』一択の人生を無自覚に送っていたのです。
そんなある日、友人が貸してくれた『ファイナルファンタジーV』をプレイしてみて、愕然としました。まるで進められないではありませんか。むろん、システム面や難易度の違いもありましたが、最大の理由は「自分が主人公じゃない」という感覚、これに尽きます。
ご存知の通り『ドラクエ』シリーズの主人公は基本、しゃべりません。あくまでも「プレイヤーの分身」といった立ち位置でした。これは『ドラクエ』の生みの親である、堀井雄二さんの思いを反映したものです。
他方、『FF』シリーズを始め多く名作RPGは、主人公にしっかり人格が与えられていることが多々あります。「ドラクエ的主人公」を前提としていると、この人格を持った主人公をプレイしている時に、まるで自分が主役でなく、主人公達を首尾よく運搬する「スタッフ」になっているような気がしてしまうのです。この症状には、早急に手を打つ必要があります。
まず筆者は『ポケットモンスター』をプレイしました。これは『ドラクエ』同様に主人公は無口ですが、世界観を同じくするアニメやマンガに平行して触れることができたので、胸に水をかける感覚で徐々に「喋る主人公」に慣れることができました。妙な角度ですが、サトシに感謝せざるを得ません。
さらに、もともと知っているキャラクターを主人公にしたゲームも、大いに「ドラクエ病」治療に役立ちました。なにせ、これらは「最初からどんなキャラ」であるかを知った上で操作できるので、途中で自分と主人公の乖離を心配する必要がありません。
続けて、別ジャンルでリハビリを続けます。例えば法廷バトルアドベンチャーゲームである『逆転裁判』シリーズです。題材が裁判ですから、主人公である成歩堂龍一は当然しゃべりますし、声も出ます。が、実際に考えて謎を解くのはプレイヤー自身です。表面上の性格が異なっていようとも、一体感を得ることは十分に可能、そう実感できれば、ほぼ治療は完了したのも同じです。
この長い長いリバビリ期間を経て、無事に筆者は『ファイナルファンタジー X 』をプレイすることに成功しました。フルボイス機能を導入した同作のその圧倒的スケールの物語に、全身が痺れるほどの感動を覚えたのです。これにて、完治です。
さて、再び『ドラクエ』の新作が発売されたので、プレイしてみれば「あれ、主人公がしゃべらないな」という違和感を覚え……再びまた同じ轍を丁寧に踏み直す旅が始まるのでした。この症状にならないようにするためには、「色んなゲームをプレイする」のが一番かもしれません。
(片野)