「シニア化するオタク」問題、生前見積りは定着するか? 河崎実監督に聞く
アニメ、マンガなどのファン向けグッズの専門店「まんだらけ」が、「オタク第一世代」の高齢化に先駆けて、コレクショングッズの「生前見積り」サービスを開始し注目を集めました。長年、数々の特撮映画、パロディ映画を撮影し、自身もオタク第一世代である河崎実監督に、シニア化していくオタク世代の問題について語ってもらいました。
「還暦」迎えても元気なクリエイターたち
『日本以外全部沈没』(2006年)や『地球防衛未亡人』(2014年)などのヒット作を放ってきた河崎実監督は、1960年代にテレビ放映された『ウルトラマン』などを観て育った「オタク第一世代」です。長年収集したコレクションを持ちながら、シニア化していくオタク世代の切実な問題について語ってもらいました。
——萌えカルチャーを先取りしたSFコメディ『地球防衛少女イコちゃん』(1987年)で商業デビューした河崎監督は、1958年生まれ。還暦なんですね。
河崎実(以下敬称略) みうらじゅん、岡田斗司夫も同年生まれです。「オタク」と呼ばれ出した世代が還暦を迎えたわけです。よく30年以上も特撮映画を撮り続けてこられたなぁと自分でも思います。みうらじゅんが言っていましたが、「またやってる」を通り越して「まだやってる」と言われることがプロの称号だと(笑)。僕の両親は父96歳、母94歳と介護知らずで元気なので、DNA的にはこれからまだ30年くらい僕は映画を撮り続けるつもりでいます(笑)。
——今のシニア世代はとても元気ですよね。
河崎 そうなんです。先日もね、『地球防衛少女イコちゃん』の第1作に出演してくれた吉田照美さんが68歳になったことがきっかけで、吉田照美主演作『ロバマン』を撮ることになったんです。
—68(ロバ)歳のニューヒーロー『ロバマン』ですか。クラウドファンディングで製作費を募集し、目標額の2倍以上も集まったそうですね。
河崎 最近は、『地球防衛少女イコちゃん』や自主映画『エスパレイザー』(1983年)もクラファンで資金を募ってDVD化しました。『エスパレイザー』のDVD化は特に思い入れがあるんです。
というのも『エスパレイザー』にスタッフとして参加していた上松辰巳くんがね、中野の「まんだらけ」で倒れて、その後亡くなったんです。まだ58歳だった。彼は腕のいい造形師で、『エスパレイザー』のヒーロースーツは彼がデザインし、『電エース』のスーツもそれを流用したものでした。彼を追悼する意味も込めて、『エスパレイザー』をDVD化したんです。彼は生涯独身だったんだけど、家族は彼が残したコレクションをどう整理すればいいのかで悩んだみたいだね。