「若さ故の過ち」では済まない? 『まんが日本昔ばなし』の若者がやらかすトラウマ話
1975年から1994年にかけて放送された『まんが日本昔ばなし』のなかには、ホラーのようなトラウマ回狩り、時には若者が勢いに任せて行動し、望まぬ最期を迎える話が放送され、多くの子供たちを怖がらせていました。今回は特に印象に残るお話を、ふたつ紹介させていただきます。
柳の精の復讐劇

1975年から1994年にかけて放送された『まんが日本昔ばなし』にはは、いわゆる「トラウマ回」と言われるエピソードがいくつかあります。なかには、若者が勢いに任せて行動し、悲惨な最期を迎える話もありました。今回はふたつ、特に印象に残るお話を紹介させていただきます。
●「十六人谷」: 1983年12月3日放送
今で言う富山県のある村に、弥助という年寄りが住んでおりました。弥助は囲炉裏を前に茶を飲みながら、目の前に座っている若い女に昔ばなしを聞かせます。
若いころの弥助は木こりとして働き、生計を立てていました。そんなある日、弥助は死んだ仲間の通夜に参列し、したたかに酒を飲みます。
家に帰った弥助を待っていたのは、見知らぬ若い女でした。女は「谷の柳の木だけは切ってくれんな?」と弥助に頼み込みましたが、弥助は頑として跳ねつけ、そのまま寝てしまいます。
女は「必ず聞いていただけると思っています」と言い残し、姿を消しました。翌日、弥助と15人の木こり仲間は予定通り谷に入り、それは見事な柳の木を見つけます。女の事を思い出した弥助は仲間を止めようとしましたが、喜び勇んだ若者たちは弥助に構わず、あっという間に木を切り倒してしまったのです。
その日の夜のことでした。弥助たちが寝入ったころ、小屋に女が姿を現しました。女は寝ている男たちに口づけると、舌を吸い取り次々と殺して行ったのです。
木こりたちはひとり、またひとりと殺されて行き、最後に弥助だけが残りました。目を覚ましていた弥助は近づいて来た女を山刀で切りつけ、かろうじて逃げ延びたのです。
それから時が経ち、おじいさんになった弥助は、目の前の女に昔ばなしを続けます。やがて舌を抜かれた弥助の死体が見つかったのは、真っ赤な夕陽が空を染めた頃合いでした。弥助は、なぜか恍惚とした表情を浮かべていたそうな。そして、この事件の犠牲者数にちなんで、その谷は「十六人谷」と呼ばれるようになりました。
「十六人谷」は『まんが日本昔ばなし』のなかでも、屈指のトラウマ回として知られています。特に、木こりたちを殺しに来た女の姿の恐ろしさはすさまじいものがあり、当時の子供たちはTVの前で震え上がったのではないでしょうか。大きな柳の木というお宝に舞い上がり、弥助が止めるのも聞かず切り倒してしまった、若い木こりたちの暴走が招いた悲劇は多くの教訓を秘めているように思えます。