格ゲー大会の「持込コントローラー禁止」事件 eスポーツにどんな影響?
かつて、水泳の世界競技でSPEEDO 社の水着を着用した選手が非着用者よりも優位な記録を出すことが問題視され、議論が巻き起こりました。今まさに、それと同じことがeスポーツ大会やゲーム競技の現場で起こっています。
レバーなしの専用コントローラーが使用禁止に
2019年5月24日~5月26日にかけてアメリカで開催された大規模な格闘ゲーム大会、「ComboBreaker 2019」において、日本人プロゲーマーの梅原大吾さんが使用予定だったコントローラーについて「使用禁止」を言い渡されました。
梅原大吾さんは、数々の格闘ゲーム大会で勝利を収め、「The Beast」というニックネームで国際的にも知られている強豪プレイヤーで、ニューズウィークが発表する「世界が尊敬する日本人100人」のひとりにも選ばれています。梅原さんが持ち込んだコントローラーが「禁止」とされた背景には、いったい何があったのでしょうか。
通常、格闘ゲームのコントローラーといえば、ゲームセンターでよく見かける、レバーとボタンがついている形のもの(通称:アケコン)をイメージされる方が多いと思います。今回、「ComboBreaker 2019」で禁止とされたコントローラーは、「アケコン」のレバー部分をボタンに置き換えた格闘ゲーム専用コントローラーで、これに似た製品としてHit Box Arcade社製の「Hit BOX」が広く知られています。
この種のコントローラーは、パソコンのキーボードをタイプするかのような感覚でプレイでき、レバーを用いるより効率的な入力が可能であるといわれています。大会側は、コントローラーの機能差によって勝敗に不公平が生じないよう配慮し、「使用禁止」の決断を下したものと考えられます。
純然たる「スポーツ」へ。浮かび上がる2つの問題
結局、梅原さんはレバーのついているコントローラーで大会に出場したとのことですが、この出来事から、ふたつの興味深い問題が浮かび上がってきます。
ひとつ目は、こうしたゲーム大会が「公平性」や「ルール」の徹底を加速させつつあることです。ビデオゲームを舞台とした競技=eスポーツが世界的に盛り上がり、競技大会の勝敗にいっそう注目が集まるなかで、eスポーツを文字通り「スポーツ」文化へと押し上げていこうという主催者・参加者の意識向上を感じ取ることができます。
もうひとつは、ゲーム大会の「競技ルール」を、プレイヤーたちがどのように受け入れるか、という点です。スポーツの祭典であるオリンピックにおいては、過去、ノルディック複合や水泳などさまざまな競技でルールの変更が行われました。
ルール変更はある国にとって有利にはたらきましたが、逆にメダルから遠ざかってしまう国もありました。一概にすべてを「ルール」のせいにするのはナンセンスですが、高みを目指す選手(プレイヤー)たちが主要な大会のレギュレーションに敏感になっていくことは間違いないでしょう。
今後も、eスポーツにおける「ルール」についての議論は盛んになり、大会主催者やプレイヤー、そしてファン層をも巻き込んでいくことが予想されます。しかし、そのような議論はeスポーツ競技をルール面から洗練させていくという、前向きな可能性ととらえることもできるのではないでしょうか。
(マグミクス編集部)