家族と敵対する『X-MEN:ダーク・フェニックス』 その葛藤が心に刺さる!
2019年6月21日から、映画『X-MEN:ダーク・フェニックス』が公開されています。2000年から続く「X-MEN」シリーズの最終章として位置づけられた作品です。『X-MEN』最強のキャラクター、ジーン・グレイの暴走を描く今作は、どのような「ヒーロー像」を描いているのでしょうか。
「最強の敵」になった家族 救うのか、殺すのか?
2019年6月21日に公開された映画『X-MEN:ダーク・フェニックス』は、2000年から旧3部作、新3部作、スピンオフと、次々に登場した「X-MEN」シリーズの最終章です。
原作は1963年に描かれ、以来マーベル作品の人気のキャラクターを生み出してきました。「主人公がのちに能力を授かる」という、従来のヒーロー物語とは逆の発想で生み出されたのが「X-MEN」であり、当時としては革新的でした。
その根底にあるのは、市民権の問題です。生まれながら超能力をもったミュータントたちは迫害を受ける人種的、宗教的マイノリティの暗喩で、世界に認められず、恐れられる存在として描かれる場面が多いのです。
今作でキーパーソンになる女性、ジーン・グレイも、自身が持つ強大な能力をコントロールできずに、恐れられている存在です。
前作の『X-MEN:アポカリプス』では悪の脅威に大打撃を与えて活躍しましたが、強力なテレパシーとサイコキネシス能力を持つがゆえに、今作では悪に支配されダークサイドが増幅。能力が制御不能となり、全宇宙を、そして仲間を破滅に追いやるもうひとつの人格「ダーク・フェニックス」が解き放たれてしまいます。
この映画は「アベンジャーズ」シリーズのようなド派手なシーンを期待すると、肩透かしを食らうかもしれません。もちろん、念動力を使った戦闘シーンなどは目を見張るものがありますが、映画の見どころは、出演者の目、表情、動きなどに表れている、セリフにならない感情にあります。
知らない同士が家族となってコミュニティを作り、その家族が悪に染まってしまった時にどうするのか? 巨大な悪と立ち向かうヒーロー物語とは別のアングルから「X-MEN」を描き、家族のあり方をを考えさせられる作品に仕上がっているのです。
ミュータントたちは人種、能力に関係なく生きる権利を主張し、彼らのなかで一時的な決着をつけます。シリーズ作品を見ている人は「X-MEN」シリーズの大きなテーマが理解できるでしょう。