『サザエさん』の舞台は昭和? 現代? 困惑する「時代設定」への「公式回答」とは
『サザエさん』は50年以上続き、多くの視聴者に愛されている国民的アニメです。昭和のような世界観の『サザエさん』ですが、実は当時には存在するはずのない、現代のアイテムが登場し、たまにネット上でも「時代設定どうなってんだこれ」などとツッコミが入っ話題となっています。
ガラケーや東京スカイツリーまで登場する『サザエさん』
アニメ『サザエさん』は1969年の放送開始から50年以上、多くの視聴者に愛されています。放送が始まった当時の昭和のような世界観の『サザエさん』ですが、実は存在するはずのない、現代の家電などのアイテムや建物がたびたび登場してきました。ネット上でも「時代設定どうなってんだこれ」などとツッコミが入り、コメントが賑わっているようです。
まず「ガラケー(フィーチャー・フォン)」が登場しています。今となってはスマートフォンに取って代わられたものの、2000年代は大きなシェアを誇っていた二つ折りの携帯電話は、当然昭和の時代には存在しません。しかし、2008年1月6日放送の「なつかしの火の用心」では、時代設定に関して混乱するシーンがあります。
波平とマスオ、花沢さんのお父さんの3人で、おでんの屋台で酒を飲んでいる際、波平が花沢さんの父からガラケーを借りて家に電話をするのです。電話に出た波平の妻・フネが自宅のダイヤル式黒電話で話しているのに対し、波平は外出先から携帯電話を使って通話をしているという、時代背景がごちゃ混ぜな描写となりました。ネット上では、この場面が「なんか波平さんがガラケー使ってましたけど」などと、ツッコミの材料としてよく引用されています。
また、「デジカメ」が登場した回もありました。磯野家は先ほどの黒電話のように、いまだにブラウン管TVを使用しているなど、懐かしの古い家電を愛用しています。ならば、カメラもフィルム型を使用しているのかと思いきや、2016年10月9日放送の「こだわりの一枚」で予想は覆されました。
磯野家の面々がお互いの姿を撮影するという内容でしたが、波平がカメラを片手に「消すのはいつでも消せる」と発言します。そして、撮影した画像がカメラ裏面の液晶に映し出されている様子が描かれ、磯野家がデジカメを使用していることが判明したのです。これには「衝撃!磯野家にまさかのデジカメ!」「平屋、ブラウン管テレビ、緑冷蔵庫、二層式洗濯機、黒電話の家にデジカメ?」などと驚きの声が相次ぎました。
そして、大きな驚きを呼んだのは、2012年にできた「東京スカイツリー」の登場です。2016年3月27日に放送された「原作生誕70周年記念 サザエさん 春の浅草観光&湯水家でお手伝いSP」では、カツオが写真コンクールへ出展するためのネタ探しとして波平と浅草へ出かけます。いろいろと撮影するなかで、カツオは「あっスカイツリー」とつぶやき、スカイツリーと思われる建物を撮影しました。
ちなみにこの時も、カツオの手にはしっかりとデジカメがあり、ネットでは「世界観が昭和のままスカイツリーとかデジカメ出てくるの、スチームパンク感があるな」「サザエさん時空にスカイツリーが存在とは」など、「時空の歪み」を感じた視聴者のコメントもあります。
今回紹介したアイテム以外にも、ワイヤレスゲーム機や水色のランドセルが出てきた回もありました。ネット上では「まさかのワイヤレス」「サザエさんの時代は赤と黒のランドセルしかなかったんじゃない?」などの声が上がっています。また、2003年4月13日放送の「われらストレスの友」の回では、お隣の伊佐坂先生がノリスケの勧めでパソコンで原稿を執筆しようとするエピソードも描かれました。
その他、たびたび現代で活躍する有名人がゲストで出演するなど、『サザエさん』の時代設定には困惑する要素が多いのは確かです。ただ、アニメ『サザエさん』を手掛けてきたアニメーション制作会社「エイケン」のプロデューサー・田中洋一さんは、放送50周年を記念して発売された「サザエさんヒストリーブック1969-2019」のインタビューで、はっきりと「アニメ『サザエさん』は現代を描いているんです」と語っています。あくまでも最先端の現代ではなく「後ろ端にギリギリしがみついているくらいの現代」だそうですが、設定が現代なのであれば、たまに新しい家電が出てくるなどの描写も納得がいきます。
また、「サザエさんヒストリーブック」では、アニメ『サザエさん』のフジテレビ初代プロデューサー・久保田榮一さんもインタビューに答えており、そのなかで「『サザエさん』はあくまで常に『現代』という設定」と発言していました。田中さんのインタビューによれば、原作マンガ(1946~74年まで連載)の雰囲気を守ることを意識しつつも、たまに設定や小道具を現代に合わせて変更することはあるようです。しかし、「間違い探しの企画」で磯野家のTVを液晶に変えたところ、田中さんは「温かみが失せた」と感じたそうで、そういったこともあり黒電話やブラウン管テレビなどのアイテムは『サザエさん』に欠かせない要素として残り続けています。
昭和風の世界観を守りながら、たまに現代とのリンクで遊び心を見せてくるのも『サザエさん』の見どころのひとつと言えるでしょう。いずれ時代が進むなかで、ついにサザエさんたちが「スマホ」を使う場面が描かれることもあるのでしょうか。
(LUIS FIELD)