TVアニメ化されなかった「不良マンガ」たち ケンカが強くない男子こそ憧れた?
近年では『東京卍リベンジャーズ』がアニメ化され人気を博していますが、従来のいわゆる「不良マンガ」はアニメ化の題材としては人気がなく、過去の名作マンガのなかにはアニメ化実現していないタイトルも数多く存在します。今回は1980年代から90年代に人気があった3作品を紹介します。
かつて「マガジン」と「ジャンプ」の看板作品だった
過去には数多くの名作があった「不良マンガ」は、実はアニメ化の題材としては人気がなく、今なおアニメ化が実現していないタイトルも数多く存在します。近年の『東京卍リベンジャーズ』のアニメ化は珍しいケースといえるかも知れません。今回は、1980年代から90年代に人気があった「不良マンガ」3作品を紹介します。
●『カメレオン』

『カメレオン』は加瀬あつし先生が「週刊少年マガジン」に1990年から2000年まで連載した作品です。実写化及びOVA化は果たしましたが、残念ながらTVアニメ化には至りませんでした。
『カメレオン』の主人公である矢沢栄作(やざわ えいさく)は、中学時代に学校中の不良からイジメの標的とされていた不幸な過去の持ち主です。地獄のような中学生活を終え、成田南高校への進学を機に不良としてデビューを果たした栄作は、IQ140の頭脳と持ち前のハッタリ、そして土壇場でもたらされる強運を武器にさまざまなトラブルを解決し、不良のカリスマとして周囲から一目置かれるようになっていきました。
成南の番長と認められたのちには暴走族「OZ(オズ)」を結成し初代総長になるなど不良としての出世街道を驀進(ばくしん)します。さらに成り行きで東大受験を目指すことになり見事に合格しますが、紆余曲折あって卒業式の日に成南を自主退学する羽目になってしまいます。それでも周囲には東大程度では納まらない器と讃えられ、恋人のヒカルとの間に子供を設けるなど、幸せに暮らすラストを迎えました。
なお、筆者は『カメレオン』の舞台である千葉県成田市にほど近い街で少年時代を過ごしまししたが、あまり喧嘩が強くない男子にとって栄作は憧れの的だったことを追記させていただきます。
●『ろくでなしBLUES』
『ろくでなしBLUES』は森田まさのり先生が「週刊少年ジャンプ」で1988年から1997年まで連載した作品です。2017年時点で単行本の累計発行部数は6000万部を超えており、不良マンガの金字塔を築き上げた作品といえるでしょう。
主人公の前田太尊(まえだ たいそん)は帝拳高校に通う高校生。親友の山下勝嗣(やました かつじ)や沢村米示(さわむら よねじ)、同級生の七瀬千秋(ななせ ちあき)らとともに学生生活を送っていた太尊は、圧倒的な強さと男気で1年生にして番長の座に収まります。
不良として頭角を現した太尊は、上級生の畑中優太郎(はたなか ゆうたろう)や後にボクサーとして対決する原田成吉(はらだ せいきち)、更に東京四天王と呼ばれる池袋正道館高校の葛西、浅草笹崎高校の薬師寺、渋谷楽翠学園の鬼塚など、数多くの喧嘩自慢の強敵たちと時に争い時に共闘し、友情を深めていきました。
『ろくでなしBLUES』は連載期間が長かったため、女子高生のファッションは年ごとの流行を取り入れており、当時の文化を知る貴重な資料となっているのも特徴といえるでしょう。
また、当時は格闘技術があまり一般的には知られていなかったため、ネリチャギ(かかと落とし)を得意とする極東高校の辰吉保栄(たつよし やすえい)が登場した際には当時の子供たちに一大ネリチャギブームを起こしたことも特筆すべきでしょう。
●『疾風伝説 特攻の拓』(かぜでんせつ ぶっこみのたく)

『疾風伝説 特攻の拓』は、佐木飛朗斗先生が原作、所十三先生が作画を担当し、「週刊少年マガジン」で1991年から1997年まで連載されました。セリフに極めて個性的なルビや当て字を使用するのが特徴で、中でも「不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまった」や「“待”ってたぜェ!! この“瞬間(とき)”をよォ!!」などはネットミームとして普及しており、元ネタを知らずに使っている方も多いようです。
さて、『疾風伝説 特攻の拓』の主人公・浅川拓(あさかわ たく)は真面目だったためいじめられていた高校生。鳴神秀人(なるがみ ひでと)との出会いから強くなりたいと思う気持ちが芽生えた拓は、ひょんなことから不良のふきだまりと呼ばれる私立聖蘭高校へと転校し、暴走族「爆音小僧」のメンバーとなります。気合と友情でさまざまな困難を乗り越えて成長した拓は、いつしか神奈川県で一目置かれるほどの存在となっていったのです。
現代では想像もつかないかもしれませんが、連載当時の90年代は多数の暴走族が実際に活動していました。当時の若者や、実際に暴走族に入った若者たちのなかには、拓や秀人に憧れていた方もいるのではないでしょうか。
(ゆうむら)