『ガンダム』「連邦よりジオンのほうが正義」 ファンでも意見割れる「どっちが悪い」論争
『機動戦士ガンダム』ファンの多くが一度は通る道に、ジオンびいきがあります。「アムロは連邦軍だけどホントはジオンが正義なんだよね」という声は珍しくありません。こういった意見が出るのは『ガンダム』が重層的なテーマを持つ優れた物語である証拠ですが、そもそもどうして両陣営は戦っているのでしょうか?
膨大な資料で補足された一年戦争のリアリズム
ジオン公国が宇宙移民の自治権を求めて独立戦争を起こしてから、宇宙世紀は激動の時代になりました。人類の半数を死滅させた大戦争の責任はどちらの陣営にあるのでしょうか? 一年戦争の前後を含めて戦争の根本的な原因について考察します。
●始まりは地球の人口爆発だった
『ガンダム』世界において、人類が宇宙に進出したのは地球の人口が増えすぎたためです。『ガンダム』の放送が始まった1979年は少子化よりも人口爆発が社会問題として取り上げられていた時代でした。「宇宙世紀0079。人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀がすぎていた」というナレーションは当時の日本人の感覚としてリアルだったと言えるでしょう。
『ガンダム』世界において宇宙移民となったのは、立場が弱い人たちが多く、地球連邦政府は地球から宇宙を統治していました。宇宙移民は自治権を持たず、地球連邦の強権に従う他なかったのです。
●ジオン公国が地球連邦に反旗を翻す
そんな状態が半世紀も続いた頃、地球から最も離れた場所にあるスペースコロニー「サイド3」のジオン公国が宇宙移民の自治権を求めて反乱を起こしました。この時の指導者がジオン公国を支配するザビ家の人々です。圧倒的に戦力で劣るジオンですが、新兵器モビルスーツの採用で優位に立つと同時に、民間人を巻き込んだ残虐な戦術で連邦を圧倒します。
その代表が「コロニー落とし」です。ジオンは閉鎖空間のスペースコロニーに毒ガスを注入して住人を虐殺し、大質量爆弾として地球に落下させたのです。この行為によって開戦から一週間で人類の約半数にあたる55億人が死亡する大惨事となりました。
独立戦争だからといって、ここまでの非道を行ってもいいのか? そもそも実質的な戦争指導者のギレン・ザビは選民思想の持ち主で、その目的は宇宙移民独立にとどまらず全人類の支配ではないか? というのが「どっちが悪い」論の起点だと言えるでしょう。