月9『監察医 朝顔』 父娘コンビの活躍はいかにして生まれた? 原作者に聞く
原作マンガと違ったドラマ生む可能性も?
ーー原作では、朝顔の母親は「阪神淡路大震災で亡くなった」という設定でした。この背景はどのように考え出されたものなのでしょうか?
香川 「なぜ朝顔は法医学者になったのか?」 そこから考えてのことです。ただ、震災そのものを動機にしたくはありませんでした。「人」が「人」を動かすという視点から、現場で働く茶子先生(朝顔の恩師である法医学者=編集部注)に会うことを動機にしたいと思いました。
ーードラマ版は原作と違い、朝顔の母親は「東日本大震災で被災し、遺体も見つかっていない」という設定になっています。このことによって、亡くなった母に対する娘と父の感情を、人びとはどのように受け止めるでしょうか?
香川 阪神淡路大震災と東日本大震災、逆説的に言えば差はないと思ってます。なぜなら、人の死はつねに特別なものだからです。震災でも事故でも病気でも。
ただ、漫画とドラマ版の違い、「母の遺体が見つからない」ことは、まったく別のドラマを生むと思います。もし自分が書くなら、全く違うものになるでしょう。
ーードラマ版に期待していること、また作品に興味を持ってくれる読者に伝えたいことはありますでしょうか?
香川 ドラマ化にあたって、「どうぞお好きにやって下さい」と返事しました。マンガとドラマは別のものと思っていますから。でも、私も経験がありますが、原作を変えると言うのは勇気が要ることなんですね。だからこそ、そこに強い作り手の意思が見えるんです。
とはいっても、試写を見て、ドラマで訴えたかったことはマンガとぶれてはいませんでした。言いたいことは同じことです。もしドラマを見て興味を持っていただけたら、ぜひマンガも読んでいただいて、「どこが違い、どこが同じか」を楽しんでいただければと思います。
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原作マンガは2013年に30巻で完結。親子、師弟、恋人など、人間関係のドラマがファンの心を打ちました。TVドラマでは、茶子先生役の山口智子さんや、主人公の恋人・真也役の風間俊介さんなどが脇役を務めます。豪華キャストによってどのような人間模様が描かれるのか、注目したいところです。
(マグミクス編集部)
●香川まさひと(かがわ・まさひと)
脚本家。『羊の木』『クヒオ大佐』(ともに吉田大八監督)などの映画脚本、『学校の怪談 花子さん』(黒沢清監督)などのTVドラマ脚本を手がける。マンガ原作では、『ましろ日』(作画:若狭星)、『前科者』(作画:月島冬二)など。