「バハムート」はドラゴンじゃなかった? 『FF』召喚獣の「誤解」しがちな元ネタ
『ファイナルファンタジー』シリーズで強大な力を誇る召喚獣たち。なかでも竜王バハムートは人気が高く、多くの作品で活躍しています。しかし元ネタをたどるとバハムートはドラゴンでないことが判明。バハムートに限らず他の召喚獣にもアレンジが加えられていました。この記事では召喚獣たちの意外な起源を紹介します。
神話や伝承を下敷きにしたファンタジー

『ドラゴンクエスト』と並んで日本を代表するRPG『ファイナルファンタジー』。世界各地の神話や伝説を取り入れているのが特徴で、アイテムやモンスターの元ネタ探しはファンにとって楽しみのひとつです。この記事では人気「召喚獣」の意外な起源を紹介します。
●大きな魚だったバハムート!
バハムート(Bahmut)とは、アラビア語に起源を持つ単語で、世界を支える巨大な魚(世界魚)のことです。
古代イスラムの宇宙観において、この世界は天使が支えているとされます。その天使は「緑のヒヤシンス石」の岩盤に立ち、世界牛クーユータが岩盤を背負っています。世界牛クーユータはどこに立っているかというと、それが世界魚バハムートです。バハムートこそ世界の基礎だといえるでしょう。
またバハムートは聖書のヨブ記に登場する巨大な陸の獣、ベヒモスに由来するとされています。『ファイナルファンタジー』シリーズでは二足歩行の巨大な牛に似たベヒーモスというモンスターが別に存在しますが、起源をたどるとバハムートとベヒーモスは聖書に由来する同一の存在だと言えます。
ただしバハムートがドラゴン化したのは『ファイナルファンタジー』だけではありません。テーブルトークRPGの草分け『ダンジョンズ&ドラゴンズ』においてもバハムートはドラゴンとして登場しています。同作は『ファイナルファンタジー』シリーズ以前の作品であるため、時系列から考えると、『ファイナルファンタジー』が『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の影響を受けた可能性はありえるでしょう。
●ヒンドゥー教の主神が女体化した?
召喚獣シヴァといえば、ダイヤモンドダストで冷気のダメージを与える氷の女王です。シリーズ初期から登場しているため、バハムートと並ぶ知名度を誇ります。
そんなシヴァですが、起源については所説あります。そのひとつはヒンドゥー教の主神の一柱、シヴァ神に由来するという説です。シヴァ神は男性神で宇宙の破壊と再生をつかさどるとされています。その姿は額に第三の眼をもち、首に蛇を巻き付け、三叉の槍を携えているという恐ろしげなもの。優美な氷の女神とは似ても似つかない姿です。
もうひとつの候補は旧約聖書に登場するシバの女王です。彼女は古代イスラエルのソロモン王の知恵を試そうとエルサレムにやってきた人物です。ふたりはお互いを認め合い、贈り物を交わし合いました。シバの女王も氷とは無縁ですが、優美な女性という点が共通しているため、シヴァ神よりも起源に近いかもしれません。