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場所がはっきりしてると余計怖い? 『まんが日本昔ばなし』観光地の「トラウマ回」

日本の各地に伝わる昔話を元にしたアニメ番組『まんが日本昔ばなし』は、多くの子供たちに愛されてきました。そのなかには、実在する場所が舞台となる恐ろしいエピソードも存在します。一体どのような場所なのか、エピソードとともにご紹介します。

八丈島が舞台の「佐吉舟」は有名なトラウマ回

『まんが日本昔ばなし』の傑作怪談回を振り返る特集の「時空旅人 2021年9月号」(三栄)
『まんが日本昔ばなし』の傑作怪談回を振り返る特集の「時空旅人 2021年9月号」(三栄)

 1975年から1994年にかけて放送された『まんが日本昔ばなし』は、笑える話や悲しい話、不思議な話や怖い話など、日本の各地の昔話を元にしたアニメです。そして『まんが日本昔ばなし』のなかには、現在は人気の「観光の名所」が舞台となっているエピソードも登場します。

 トラウマ回と名高い「佐吉舟」は、「東京から一番近い南国」とも言われる東京都「八丈島」が舞台になっています。物語は、子供のころから大の仲良しだった太兵衛と佐吉という、腕のよいふたりの漁師が主人公です。

 そんなふたりは船主の娘であるヨネが好きになり、またヨネもふたりのことが好きでした。ヨネの父親は太兵衛と佐吉に、「稼ぎの多い方に娘を嫁にやりたい」と伝えます。そして仲のよかったふたりは敵同士のような関係になり、魚取りを競い合うようになっていくのです。

 ある日、佐吉は太兵衛に勝とうと夢中で漁をしていたところ、魚の重みと大波をかぶったことが原因で、佐吉の舟は沈んでしまいました。佐吉が太兵衛に助けを求めると、太兵衛は「ヨネを譲ってくれたら助ける」と条件を出してきます。しかし佐吉は「それとこれとは話は別だ」と、太兵衛の舟に佐吉がつかまろうと手をかけます。すると太兵衛は佐吉を櫂で何度も殴り、佐吉は血まみれになりながら海へ沈んでしまいました。

 村人が行方知れずの佐吉を探すなか、太兵衛は自分のしたことの恐ろしさに震える日々を過ごします。それから少しして、太兵衛が漁に出た日のことでした。やけに魚が獲れるなか、頭から血を流した佐吉の亡霊が舟に乗って現われ「柄杓を貸してくれ……」「柄杓を……」と言ってくるのです。

 太兵衛が柄杓を渡すと、佐吉は無言で太兵衛の舟に水を汲み始めます。太兵衛が佐吉に謝っても耳を貸すことはなく、ついに太兵衛の舟は沈んでしまいました。そして太兵衛は佐吉の舟に「乗せてくれ」と懇願したものの、亡霊の佐吉は消えてしまい、太兵衛は波に呑まれ姿を消すのです……。

 太兵衛が仲良しだった幼なじみの佐吉を、「恋敵」という理由で撲殺するシーンがトラウマという人も多く、亡霊となって恨めしい表情で復讐する佐吉の顔や、彼が舟をこぐ音にも恐怖を感じるエピソードです。

 続いてのお話「亡者道」の舞台となったのは、こちらも観光地として人気な岐阜県高山市です。恐怖の出来事が起きたのは、森林地帯「青屋国有林」や高層湿原「千町ヶ原」も有名な「乗鞍岳」でした。岐阜県は青屋口から千町ヶ原までの登山コースを、平成10年から10年ほどかけて登山道として復活させており、風光明媚な場所として人気です。

「亡者道」の物語は、千町ヶ原の麓にある青屋に平十郎という百姓が主人公で、平十郎は趣味の猟に出るのを楽しみにしていました。そして晩秋のある日、平十郎は青屋から通じる「桜が岡」という「亡者道(死者があの世へ行く時に通ると言われる道)」で、猟をします。罠を仕掛け、ツグミを獲っていたところ、平十郎は不意を突かれてツグミに片目を刺されてしまいました。

 その夜、「亡者道で猟をすると亡者の叫びを聞く」という爺様の言葉を思い出した平十郎は、本気にせず笑い飛ばします。しかし、その時ツグミの大群が小屋に押し寄せてきました。焦った平十郎は山小屋を飛び出しますが、そこには無数の火の玉がうめき声をあげながら飛び交っており、やがて火の玉はドクロに姿を変え叫び声を上げます。

 恐ろしい光景に肝を潰した平十郎は、爺様も亡者道で猟をして片目を失ったことを思い出しました。その後、沼地でドクロに囲まれた平十郎は、なんとか逃げ帰ってきますが、気が触れてしまったようになり、猟もぱったりと止めたそうです。

 最後は、登山スポットとして人気の三重県・うぐい谷高(うぐいは本来は「魚+成」の字)の林道沿いに流れる渓谷が舞台となった、「牛鬼淵」というエピソードを紹介します。伊勢の山奥にある深い淵「牛鬼淵」には、顔が牛で体が鬼の化け物が住んでいるという言い伝えがありました。

 ある時、山で泊まり込みで作業をしていた年老いた木こりと若い木こりが小屋で夜を過ごしていると、妙な男が現れます。「何しとるんじゃあ」と聞く男は、年寄りの木こりがノコギリの手入れをしていると知ると、小屋のなかに入ろうとします。ところが年寄りの木こりが「このノコギリの32枚目の刃は、『鬼刃』っちゅうて鬼をひき殺す特別な刃じゃ」と言うと、男は黙って去っていきました。

 それから毎晩、同じ男が現れ、同じように鬼刃を見せては追い返す日が続きました。そして、作業中に鬼刃が折れてしまい、年寄りの木こりが修理のために山を下りた晩のことです。若い木こりは酒に酔い、いつものようにやってきた男に、老木こりが鬼刃の修理に行っていることを話してしまいます。

 すると男は「恐ろしい正体」を現しました。そして翌朝、年寄りの木こりが戻ってくると、牛鬼淵に若い木こりの着物が浮いているのを発見するのです。趣味の登山では木こりたちのように何日も同じ小屋に泊まることはないでしょうが、夜の山が少し怖くなってしまうエピソードでした。

(LUIS FIELD)

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