序盤で負けた「使い捨てザコ」だと思いきや? 後で「アツい活躍」をしたキャラ
バトルマンガでは、物語序盤で主人公に倒される敵キャラは、その後の強さのインフレについていけず、置き去りにされがちです。しかしなかには、誰もが忘れたころに、まさかの活躍を見せるキャラもいました。今回は、序盤で負けて使い捨てられたと思いきや、時間を置いて「アツい活躍」を見せたキャラを紹介します。
初登場時はモブだったはずが、世界を救うための重要な役割を担った魔法使い
代表例として『ONE PIECE』のバギーなど、序盤に登場して主人公たちに負けた敵キャラが、時を置いて活躍する展開はとても盛り上がります。しかし、そのような敵のなかには、初登場時には完全に「使い捨て」としか思われておらず、ほとんどの読者から忘れられていたようなキャラもいました。今回は、序盤で負けた後、時間を置いて「アツい活躍」を見せたキャラを紹介します。
●まぞっほ:『ドラゴンクエストダイの大冒険』
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』には、多くの敵キャラが登場しています。そして、その敵のなかで、一番最初に主人公・ダイに倒されたのが、ニセ勇者・でろりんが率いる「ニセ勇者一味」でした。そして、「まぞっほ」は、ニセ勇者一味のなかでも影の薄い魔法使いだったのですが、その後、驚くほどの存在感をみせた「アツいキャラ」です。
魔王の支配から解き放たれ、大人しくなったモンスターを退治して名声を得ていた「ニセ勇者一味」は、ダイの友達の「ゴメちゃん」をさらい、ロモス王に献上しようとしました。ダイの活躍で一味は倒されましたが、その戦いの際にもまぞっほが注目されることはなく、特に存在感を示せずに退場します。
そんなまぞっほですが、ロモス王国が魔王軍に襲撃された際に、まず有名な名言を残しました。クロコダインら魔王軍に怯え、ダイたちを見捨てて宿屋に籠っていたポップは、火事場泥棒を行っていたまぞっほに遭遇します。まぞっほは、ポップが「アバンの使徒」であることを知ると、ダイたちの戦いを水晶玉に映しました。
仲間の危機を見ても恐怖で動けずにいたポップに、まぞっほは「勇者とは勇気ある者ッ!!」「そして真の勇気とは打算なきものっ!!」「相手の強さによって出したりひっこめたりするのは本当の勇気じゃなぁいっ!!!」と、怒鳴りつけたのです。まぞっほの言葉は、かつて彼が逃げ出した魔法の師匠の受け売りでしたが、この言葉で勇気を振り絞ったポップは、仲間たちの元へ向かいました。
さらにまぞっほは、大魔王バーンとの最終決戦でも重要な役割を果たしました。バーンは、ひとつでも起動すれば地上が消し飛ぶ、「黒の核晶」が内蔵された6本の柱を世界各地に落とします。その柱のひとつに向い、「黒の核晶」を凍結させたのが、まぞっほだったのです。
世界を救う一助を担ったまぞっほは、この時、救援に現れたポップの師で大魔導師のマトリフによって、彼の弟弟子だったことが明かされました。そして、このまぞっほの設定は、前日譚である『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』で活かされており、彼の修業時代の姿が描かれています。
●カシオス:『聖闘士星矢』
80年台に人気を博したマンガ『聖闘士星矢』は、現在もスピンオフ作品が制作され、ハリウッドで実写版映画が作られるなど、根強い人気のある作品です。そんな同作に登場するカシオスは、第1話で主人公・星矢と戦って敗れた、分かりやすい「かませ犬」キャラでした。しかしその後、愛する女性のため、まさに命をかけた活躍を見せたのです。
ギリシャの聖域(サンクチュアリ)で、星矢が天馬星座(ペガサス)の聖衣(クロス)を賭けて戦った聖闘士候補生・カシオスは、それまでに戦った相手の首を一撃で飛ばして勝利するなど、圧倒的な力を誇っていました。しかし、いざ始まった戦いでは、「小宇宙(コスモ)」に目覚めた星矢に手も足も出ず、最後はペガサス流星拳で倒され、聖衣(クロス)を奪われています。
そんな「かませ犬」のお手本のようだったカシオスが再登場したのは、星矢たちがアテナを救うため、黄金聖闘士(ゴールドセイント)たちと戦った「十二宮編」でした。十二宮の5番目の宮である獅子宮で、星矢は教皇の「幻朧魔皇拳」によって洗脳された獅子座の黄金聖闘士・アイオリアの実力に圧倒され、とどめを刺されそうになります。そこに、カシオスが現れました。
師である女性聖闘士のシャイナに惚れていたカシオスは、星矢のために獅子宮に向かおうとした彼女を気絶させ、代わりにアイオリアに立ち向かったのです。そして、「目の前で人が死ぬことで解ける」というアイオリアの洗脳を解くため、自らの腹部を貫き命を絶ちました。
しかし、カシオスの死を見ても、アイオリアの洗脳は解けておらず、一部の読者の間では「無駄死にだった」との声もありました。それでも、カシオスの想いを汲んだ星矢の渾身の攻撃によってアイオリアは正気に戻っており、彼の望み通り星矢は助かったのです。
師であり想い人でもあるシャイナのため、かつての敵の星矢を命を捨てて助けようとしたカシオスの最期は、とても感動的でした。ちなみに、アニメでの彼の最期は、アイオリアの「ライトニングプラズマ」を受け止めて星矢を守る、という形に変わっています。