マグミクス | manga * anime * game

セガは時代を先取りした! 20世紀にオープンワールドを実現した『シェンムー』の伝説

1999年末にドリームキャストで発売された『シェンムー 一章 横須賀』(以下『シェンムー』)は、のちのゲーム業界に大きな影響を与えました。のちに同じ発想をしたとしても、それを20世紀のうちに作って発売したのは偉業といっていいでしょう。18年ぶりの最新作『シェンムーIII』発売を前に、本作がいかにエポックメイキングだったのかを解説します。

ドリームキャストのキラータイトルとして

プレイステーション4向けに『シェンムー 一章 横須賀』と『シェンムーII』を1本にまとめた、『シェンムー I&II』より (C)SEGA
プレイステーション4向けに『シェンムー 一章 横須賀』と『シェンムーII』を1本にまとめた、『シェンムー I&II』より (C)SEGA

 セガの家庭用ゲーム機・ドリームキャスト向けに発売され、ゲームの歴史を大きく変えたともいわれるアクションアドベンチャーゲーム「シェンムー」シリーズ。その最新作『シェンムーIII』が、2019年11月に発売決定し、多くのファンが期待を寄せています。「シェンムー」がゲーム史に残した伝説とは何だったのか、ゲーム全般に詳しいライター、松井ムネタツさんが解説します。

* * *

 1998年10月、セガ・エンタープライゼス(当時)は発売を翌月に控えるドリームキャストの新作ソフト発表会を行いました。このとき発表された隠し球のタイトルが、鈴木裕氏率いるAM2研が開発する新作タイトル、コードーネーム『プロジェクト バークレイ』でした。

 これが『シェンムー』です。同年12月にはパシフィコ横浜に1万人以上を集めた『シェンムー』発表会が開催され、ドリームキャストのキラータイトルとして注目を集めることとなりました。

 それまで『スペースハリアー』や『アウトラン』、『アフターバーナー』といった体感アーケードゲームを大ヒットさせてきた鈴木裕氏が、ついに家庭用ゲーム機で本格的なタイトルを作るとなれば、期待せずにはいられません。どんなゲームなのかと蓋を開けてみると、それはFREE(Full Reactive Eyes Entertainment)という新しいジャンル名がつけられたものでした。

 それは今で言うところの「オープンワールドゲーム」で、見事なまでに1986年の横須賀をゲーム内の3D空間で再現。街並みはもちろん、街ゆく人たちも個別に生活が設定され、「何でもできる」ゲームだったのです。キャラクターに話しかければ受け答えしてくれるし、家の中では部屋を隅々まで歩き回れたり、タンスの中を調べることができたり……。

 しかも、ドリームキャストは当時としては最先端のハードですが、いま思えば「オープンワールドゲーム」を実現するにはかなりの苦労が伴うものだったと想像できます。本体のメインメモリは16メガバイト(0.016ギガバイト。現在のPS4のメモリは8ギガバイト)、メディアとなるGD-ROMは1ギガバイト(『シェンムー』はディスク3枚組)と、オーブンワールドゲームを作るには決して十分ではないスペックで実現しているのだから驚きです。

 しかも、開発当初はドリームキャストの前世代機である「セガサターン」向けに開発が進められていたそうで、ゲームシステム的にもプログラム技術的にもかなりチャレンジした内容だったのは間違いないでしょう。

『シェンムー』は以降、『グランド・セフト・オート3』や『フォールアウト3』など、海外AAAクラスのタイトルに大きな影響を与えたともいわれています。『シェンムー』がなくてもこれらのゲームは登場していたかもしれませんが、どこよりも早く、最初にこれだけのゲームを作り上げた鈴木裕氏らセガの開発力と執念に、世界中のクリエイターが刺激を受けたのは間違いありません。

【画像】さすがに発売確定だよね? ファン待望、『シェンムーIII』の画面(8枚)

画像ギャラリー

1 2