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【地上波初放送】『この世界の片隅に』で密かに話題呼んだ「傘問答」の意味とは

平和な日常生活から、戦争の描写へ

松本穂香、松坂桃李主演で放送されたTVドラマ『この世界の片隅に』の公式ピアノ楽譜集(画像:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)
松本穂香、松坂桃李主演で放送されたTVドラマ『この世界の片隅に』の公式ピアノ楽譜集(画像:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)

『この世界の片隅に』では、すずが差し出した傘を使って、周作は軒下に吊るしてあった干し柿を引き寄せ、すずと分け合って食べることになります。嫁入り初日で緊張を強いられていたすずを和ませようという、いつもはマジメな周作なりの精一杯のユーモアとして描かれています。

 そんな優しい周作に支えられ、すずは持ち前の天然キャラぶりを発揮し、嫁入り先の人々に次第に受け入れられるようになります。しかし、戦局はどんどん悪化し、軍港のある呉市は米軍からの激しい空襲を受け、すずの実家のある広島には原爆が投下されることになります。

 前半のほのぼのとしたすずの日常生活が信じられないほど、悲惨な状況へと陥っていくのです。高畑勲監督の長編アニメ『火垂るの墓』(1988年)級の衝撃が、後半には待っています。

 連ドラ版では描かれませんでしたが、終戦を告げる玉音放送の後、市内に「太極旗」が掲げられているシーンが原作とアニメ版にはあるので、そこも密かなチェックポイントです。

 本作の大ヒットを受け、ロングバージョンとなる映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が2019年12月20日(金)から全国公開されることが決まっています。原作や連ドラ版に比べると出番の少なかった遊女・りんとすずとの交流エピソード、原爆によって壊滅状態となった広島市の被害をさらに増大させた枕崎台風などのシーンが追加されるようです。

 戦争という大きな時代のうねりの中で、懸命に自分の居場所を築いていったすずの生き方に注目しましょう。

(長野辰次)

【画像】『この世界の片隅に』の片渕監督、高畑勲氏を語る(6枚)

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