『ドラクエ』ゾーマの正体は人間? 元は人間だった「恐ろしき魔王」たち
しきりに「正体は人間説」が流れる魔王とは?
『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』 のラスボスである魔王オルゴ・デミーラの正体が「実は主人公の親友であるキーファではないか」という説が語られがちです。
しかし、作中に明確な証拠があるわけではなく、オルゴ・デミーラの第1形態のファッションやカラーがどことなくキーファに似ていたり、「キーファ=オルゴ・デミーラ」だと筋が通る、不自然な設定が多いことから生まれた説になります。
よく根拠に挙げられるのが、オルゴ・デミーラ戦の直前に手に入る「ラーの鏡」の存在です。ラーの鏡には「真実を映し出す」効果があり、敵の本当の姿を暴くシーンで重要な意味を持つアイテム。しかし、『ドラクエVII』ではオルゴ・デミーラ戦の直前で手に入るにもかかわらず、物語に絡むことはありませんでした。
さらに主人公専用呪文として用意されていたマジャスティスの呪文にも、邪悪な力を打ち消すという効果があります。そんな意味ありげな呪文ながらとくに使い道がなかったことも、ラーの鏡同様に少々不自然に感じた部分です。
そのあたりから、本当はオルゴ・デミーラの正体を暴くイベントが用意されていたのでは……という疑惑が湧き上がります。
そして「エデンの戦士たち」というサブタイトル。この「エデン」とは旧約聖書に登場する楽園「エデンの園」のオマージュで、『ドラクエVII』におけるエデンは、エスタード島を指していると思われます。
当然主人公とマリベルが「エデンの戦士」となり、聖書でいうアダムとイブの位置になります。聖書では、蛇にそそのかされたイブが禁断の果実を食べてしまい、ふたりはエデンを追放されました。その禁断の果実はリンゴとして描かれることが多く、PS版の『ドラクエVII』のパッケージで、マリベルがリンゴを食べている姿にも符号します。
そうなると、エデンを追放されるきっかけをつくった悪魔の蛇に該当するのは、最初に主人公たちを神殿に誘ったキーファだと考えるとしっくりきます。そういえばオルゴ・デミーラの真の姿も、どことなく蛇っぽいビジュアルでしたね。
本来はラスボス戦でオルゴ・デミーラの正体を明かすイベントが用意されていて、それが何らかの理由でボツになったのだとしたら、ストーリー上で使い道の見当たらない「ラーの鏡」の存在にも納得がいきます。
それに、もし「キーファ=オルゴ・デミーラ」という設定があったとすれば、エンディングでの「どんなにはなれていてもオレたちは友だちだよな!」というキーファからのメッセージも、別の受け取り方ができるかもしれません。
人間が魔王に堕ちてしまうという物語には、そこに至るまでのさまざまなエピソードが想像できます。噂が真実かはわかりませんが、人間が魔に堕ちるという側面を想像して楽しむ余地があるのも、『ドラクエ』シリーズのシナリオの魅力と言えそうです。
(LUIS FIELD)