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『まんが日本昔ばなし』のトラウマ回、原作は「もっと過激」だった!「改変も納得」

市原悦子さんと常田富士男さんの語りで日本各地の民間伝承をアニメ化した『まんが日本昔話』。約20年にも及ぶ放送のなかには、誰もが知っているような有名な昔話もありますが、実は原作からアレンジされていることも多いです。この記事では「原作はもっと過激だった」昔話を紹介します。

みんなが知っている昔ばなしには秘密がある?

日本人の国民的アニメのオープニングは「龍の子太郎」がモチーフ。画像は「まんが日本昔ばなし BOX第1集 5枚組 [DVD]」(愛企画センター・東宝)
日本人の国民的アニメのオープニングは「龍の子太郎」がモチーフ。画像は「まんが日本昔ばなし BOX第1集 5枚組 [DVD]」(愛企画センター・東宝)

 1975年から1994年にかけてテレビ放送された『まんが日本昔ばなし』には、子供が泣き出しそうなトラウマ回も存在します。TV放送された内容はマイルド化されており、「実は原作はもっと過激でバイオレンスだった」というエピソードもあることをご存知でしょうか。

●「かちかち山」…狸がひどい目に合うのは当然?

 おばあさんを殺した狸をおじいさんに代わって兎が懲らしめる「かちかち山」。子供の頃に誰もが絵本などで目にしたことがあるでしょう。もちろん『まんが日本昔ばなし』でも放送されています。

 しかし放送された「かちかち山」は本来のものと内容が改変されています。『まんが日本昔ばなし』では狸は杵(きね)でお婆さんを撲殺して逃げていきますが、民話では殺したお婆さんを「ばばあ汁」に料理した後、お婆さんに化けて振舞っているのです。この時、お婆さんの皮を剥いで化けたという説まであります。

 そして「ばばあくったじじい、流しの下の骨を見ろ」と言い放って逃げていく狸。もはやいたずらのラインを超えた極悪非道の行いです。

 そして兎の復讐も少し異なります。火傷させてから泥船に乗せるところまでは同じですが、兎はトドメとばかりに、溺れもがく狸の脳天を船の櫂(かい)で強打して撲殺しています。

 近年は狸がお婆さんを殺したりしない、兎も狸を殺さない、最後にみんなで仲直りするなど『まんが日本昔ばなし』よりもマイルド化した絵本が出版されています。しかし伝承にバイオレンスな生命力があったからこそ、長年にわたって語り継がれてきたのかもしれません。

●「さるかに合戦」…猿、死すべし!

 栗と蜂と臼と馬の糞が協力して猿を懲らしめる「さるかに合戦」も実は細部がマイルド化しています。『まんが日本昔ばなし』では猿に柿をぶつけられた蟹は怪我をして寝込んでいますが、民間伝承では死んでしまっています。

 そのため原作では容赦のない報復が実行されます。『まんが日本昔ばなし』では囲炉裏で爆ぜた栗に驚かされ、蜂に刺され、馬の糞に足を取られたところを臼に押しつぶされた猿が逃げ出して、二度と帰ってこなかったというエンディングですが、原作は異なります。殺された蟹の子供が臼に押しつぶされて動けない猿の首を、その手のハサミで搔っ切って敵討ちしているのです。

 栗→蜂→馬糞→臼の4連コンボが印象深い本作ですが「かちかち山」と同様に敵討ち、復讐譚としての一面もあります。両作品がバイオレンスな展開のため、マイルド化されて放送されたのも分かりますね。

 他にも広く知られている昔ばなしを絵本から民話まで辿(たど)ると、実は性的な話だったり、不条理で怖い話だったりするケースが数多くあります。昔ばなしは怪談と近いカテゴリーで、想像以上に深い世界です。

 興味がある方は地元の伝承を調べてみるのも良いのではないでしょうか。

(レトロ@長谷部 耕平)

【画像】原作エグ! 日本昔ばなしの名作エピソード(5枚)

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