昭和スポーツ漫画の「トンデモ描写」がありえないレベル 生死かけた球場バトルも
『キャプテン翼』『テニスの王子様』などの人気スポーツマンガでは、次々登場するインパクト抜群の「技」が読者を魅了していますが、現実にありえないような「トンデモ描写」は、実はすでに50年前の昭和スポーツマンガに数多くありました。しかも、それらの描写は現代のマンガ作品にもひけを取らない強烈さを見せつけているのです。
『巨人の星』ですら「トンデモ度」は控えめ?
現実世界ではありえない表現に対して「あまりにマンガ的な」といわれることがありますが、マンガの世界では昔から「トンデモない表現」が少なからず見られます。なかでも昭和のスポーツマンガは「トンデモ描写」の宝庫といえるでしょう。
その代表的な作品といえば、1966年より「週刊少年マガジン」(講談社)で連載開始した『巨人の星』(梶原一騎原作/川崎のぼる画)がまず挙げられるのでしょうが、実は同作は、数ある昭和のスポーツマンガのなかでは比較的おとなしい表現といえます。
有名な「大リーグボール」にしても、魔送球を応用し、打者のバットに球を当てる「1号」、「足を高く上げると青い虫が飛び、青い葉にとまる」と言われた消える魔球の「2号」、強打者のスイングが起こす風圧でボールがバットをよける「3号」も、一応理屈としては通っています。
『巨人の星』以前の野球マンガでは、1961年の『ちかいの魔球』(福本和也原作/ちばてつや画)や、1963年の『黒い秘密兵器』(福本和也原作/一峰大ニ作画)ではさまざまな「魔球」が登場する「トンデモ描写」がみられます。
野球マンガ以外では、梶原一騎氏の漫画原作者としてのデビュー作であるプロレスマンガ『チャンピオン太(ふとし)』(梶原一騎原作/吉田竜夫画)や、ジャイアント馬場を主人公にした、『ジャイアント台風』(高森朝雄原作/辻なおき画)も、「トンデモ描写」のオンパレードです。実在の人物をマンガに登場させるという梶原の手法は『巨人の星』などでも見られますが、『ジャイアント台風』は、あくまで馬場本人が主役。それゆえ視覚的に感じる「トンデモ度」は、かなり高く感じられます。
例えば、力道山道場の「新人歓迎パーティー」では、ハチの巣が道場に投げ込まれ、馬場は全身をハチに刺されてしまうのですが、犯人の力道山は「その程度なら血液にハチのホルモンがまじって、からだにいいだろう」と豪快に笑うありさまです。
またフィリッツ・フォン・エリック戦を前にした馬場が、アイアンクロー対策として自らのアタマを地中に埋め、ジープで轢かせる特訓などは、まさに「トンデモ描写」です。