少年の心を打ち砕いた、ファミコン誌の「ウソ技」と『水晶の龍』の記憶
1988年、ファミリーコンピュータ・ディスクシステム向けに発売された『水晶の龍』は、「ウソ」によって現代まで記憶に残る作品となりました。当時、その「ウソ」に引っかかった経験を持つゲームライターの早川清一朗さんが、ファミコン世代を夢中にさせた「裏技」ブームとあわせて当時の思い出を語ります。
時代は「裏技ブーム」、雑誌は貴重な情報源だった
ファミコン全盛時代に話題となった「裏技」という言葉をご存知でしょうか。これは説明書にはないコマンドや、バグを利用したさまざまな現象のことで、ゲームの楽しみ方のひとつとして当時の子供たちは大いに熱中しました。
有名な裏技としては、KOMAMIのシューティングゲーム『グラディウス』のパワーアップコマンド「上上下下左右左右BA」があり、「コナミコマンド」と名付けられてさまざまなゲームに実装されています。筆者がこのコマンドを知ってから35年ほど経ちますが、今でも裏技と言えば真っ先に思い出すほど、子供たちには浸透していました。
当時、裏技に関する情報はもっぱら雑誌や攻略本といった書籍や、友達同士の口コミによって広まっていました。今では信じられないかもしれませんが、ファミコンブームの際には多くのファミコン情報誌が創刊されていました。子供のお小遣いでは、何千円もする高価なカセットにはなかなか手が届きません。しかし雑誌ならどうにか手が届きます。インターネットが無い時代、ファミコン情報誌は子供たちにとって、貴重な情報源としてもてはやされたのです。
とはいえ子供たちも、全ての雑誌を購入することはできません。各誌はさまざまな特集を組んだり独自のコンテンツを掲載したりと知恵を絞っていましたが、なかでも裏技は子供たちの興味を引くための重要な要素となっていました。
裏技で特に有名だったのが、徳間書店から1985年に創刊された『ファミリーコンピュータMagazine』(以下、ファミマガ)です。ファミマガでは裏技は「ウル技(うるテク)」と呼ばれており、1号あたり50個、多い時には100個もの「ウル技」が掲載されていました。
たまたま筆者が持っているゲームのウル技が掲載されたときには、大喜びで再現していたのをよく覚えています。『ギャラクシアン』の隠し音楽モードで「シバの女王」という曲を初めて聞いたのは筆者だけではないでしょう。