少年の心を打ち砕いた、ファミコン誌の「ウソ技」と『水晶の龍』の記憶
「ウル技」にひとつだけ混じっていた、問題の「ウソ技」
しかしながらこの「ウル技」、なぜか毎回嘘が仕込まれていて「ウソ技(ウソテク)」と呼ばれていました。技によっては子供たちの間で結構ウケていたものもありましたが、なかには筆者が今でも許せないウソ技もありました。
それが、今でも「ウソ技」の代名詞として語り継がれている、『水晶の龍』の「シンシアの野球拳」です。
筆者も引っかかりました。
本当に悔しかったです。
さて、『水晶の龍』とは、1986年にスクウェア(現・スクウェア・エニックス)から発売された、ファミリーコンピュータ・ディスクシステム用のアドベンチャーゲームです。
TVCMに当時のゲームとしては画期的なアニメーションを使用しており、ヒロインのシンシアが「助けてー!」と叫びながら彼方へと姿を消す印象的なものでした。
ある日、友達が妙にコソコソとしているのでどうしたのか聞いてみたところ、最新号のファミマガを見せてくれました。そこにはなんと、シンシアの服を脱がすという「ウル技」が掲載されていたのです!
当時の若く純情な少年は好奇心の赴くままにディスクの「書き換え」に向かい、速攻で『水晶の龍』を入手し、プレイを開始しました(編集部注:店頭の専用機器で手持ちのディスクを別のゲームに書き換えできるサービス。通常500円とカセットより安価にゲームを入手できた)。
しばらくゲームを続けて、どうにか該当のシーンに到達し、すぐに掲載されていた技を試し始めました。シンシアが出てきたシーンで「手を見る!」コマンドを選択すると、アイコンがグー・チョキ・パーになるはず!
しかし、何度も試しますがアイコンが出ません! あきらめずに試しましたが、いくらやってもアイコンが変化することがありませんでした。2~3日同じことを繰り返し、「もしかしたらこれはウソ技じゃ……」と思い諦めてからしばらく経って、次号のファミマガを見て……怒りに震えました。
やはり、「ウソ技」だったのです。
なんでも、この「ウソ技」が掲載された直後に、『水晶の龍』の売り上げは飛躍的に伸びたそうです。筆者と同じように純情を弄ばれた少年たちが、当時沢山いたのですね……。
(早川清一朗)