【特別展】戦後の「野球」人気に始まり、「五輪」で広がったスポーツマンガの歴史
昭和39(1964)年の東京オリンピックを契機に、さまざまなスポーツを取り込んで巨大ジャンルに発展したスポーツマンガの歴史をひもとく展覧会が、江東区森下文化センター(田河水泡・のらくろ館)で開催されています。日本のスポーツマンガ隆盛のルーツにあったのは、戦後GHQの推奨により、大人気スポーツとなった「野球」でした。
1964年「東京五輪」を機に、ジャンル・題材が拡大

戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の文化統制によって、大衆娯楽の中から、チャンバラなどの日本的なものは姿を消していきました。その代わりに推奨されたのが「野球」です。チーム同士で得点を争うスタイルは、民主主義の象徴と考えられたのです。そうした風潮の中で生まれたのが井上一雄の野球マンガ『バット君』です。戦後のスポーツマンガの第1号となりました。
野球以外のスポーツといえば相撲や柔道、ボクシング、プロレスなどの格闘技しか知らなかった子どもたちに世界のスポーツを見せてくれたのが、昭和39(1964)年の東京オリンピックでした。
さらにその4年後に開催されたメキシコオリンピックでは、日本代表のサッカーチームが銅メダルを獲得。野球により始まった戦後スポーツマンガは、バレーボール、テニス、サッカー、格闘技……など、さまざまなスポーツジャンルを取り込んで、拡大していったのです。
現在、スポーツマンガは「友情」、「努力」、「勝利」を表現するものとして、少年誌には欠かせないテーマのひとつです。読者の興味を引く新興スポーツはないかと、各誌の編集者は血眼になってヒーローや題材を探し続けています。
2019年から2020年に向けて、スポーツのビッグイベントが目白押しの日本。さまざまなスポーツの話題が盛り上がるなか、東京・江東区森下文化センター(田河水泡・のらくろ館)で特別展「スポーツマンガの魅力が大集合!! ~名選手を生んだ傑作マンガ!」が開催中です。大きく裾野が広がったスポーツマンガの歴史を、貴重な雑誌の切り抜きや単行本、複製原画で紹介しています。