『ディリリ』のミッシェル・オスロ監督、「厳しい現実」おとぎ話風に描く
『キリクと魔女』などで知られるフランスアニメーションの巨匠、ミッシェル・オスロ監督の最新作『ディリリとパリの時間旅行』が、2019年8月24日(土)から全国公開されます。「美しい時代」と呼ばれたパリを舞台に、重いテーマをおとぎ話風に描いたという同作について、監督自身にインタビューしました。
目をそらしてはいけない「子どもたち」の問題
2019年6月に開催された「フランス映画祭2019」にフランス代表団として来日したミッシェル・オスロ監督のアニメーション作品『ディリリとパリの時間旅行』が、8月24日(土)から全国公開されます。「ベル・エポック(美しい時代)」と呼ばれた1900年頃のパリを舞台に、ニューカレドニアからやってきた少女ディリリが、友人オレルとともに少女誘拐事件に挑む物語です。
フランス国内でもっとも権威のある「第44回セザール賞」で最優秀アニメ作品賞を受賞した同作品。パリを舞台にした理由や、偉人たちを描く上で参考にしたこと、ディリリのモデルなどについて、オスロ監督に聞きました。
ーーパリを舞台にした理由は何でしょうか?
オスロ監督(以下敬称略) パリにこだわりがあったわけではなく、これまで周囲の人たちや周辺の国を描いてきたのに、パリを描かないのはおかしくないか? と思ってパリを取り上げました。しかし、パリがメインという意味ではなく、背景や衣装、ファッションとして描いています。
1900年頃を舞台にしたのは、大人の女性が長いワンピースを着て、とても美しかったから。その時代でないといけませんでした。描いてみて、「なんて感動的な時代だろう」と思いました。男性支配や子どもを虐待するようなものに対抗するのに、この時代は模範的だと思いました。
ーー描かれた「男性支配団」や少女誘拐などのテーマが、重く感じました。
オスロ おっしゃる通り。世界中で男性や女性、子どもたちにひどい虐待が行われていることをテーマに取り上げました。これは目をそらしてはいけない、戦争よりもひどい問題です。戦争よりも、虐待などで多くの少女、子どもたちが命を落としているのです。
世界には辛く大変な状況、条件のもとで生きている人たちがいます。それを、おとぎ話風に描かなければいけませんでした。
ーーさまざまな著名人が出てきますが、参考にされたものはありますか?
オスロ きちんと下調べしました。肖像画や写真を集めて自分で描線を描いて色を塗っていきました。デリケートなのは、映画では偉人たちも360度見せなければいけないところです。一部の資料では「50歳の写真は横顔、20歳は正面」などアングルが違っていて、見えてない部分や間の年代を想像で描かなければいけませんでした。
ーーディリリの性格などの設定にはモデルがあるのでしょうか?
オスロ 自分の甥と姪のふたりからインスパイアされました。弟の方が小さいけれど大人っぽく、大人のような話し方をします。ディリリの造形自体は自然に出てきました。私にとって、ヒロインは聡明な少女でないといけませんでした。そして、パリという世界に新しい視点をもたらすために、「ほかの国の女の子」という設定が必要だったのです。
(マグミクス編集部)
※映画『ディリリとパリの時間旅行』は2019年8月24日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開予定。
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